2016年 02月 09日

東雅夫 編『文豪怪談傑作選・特別篇 百物語怪談会』読了

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 写真は、此岸と彼岸の集合住宅がダイレクトに隣接する、東京風景。

~2月4日より続く

 東雅夫 編『文豪怪談傑作選・特別篇 百物語怪談会』は、『怪談会』
(柏舎書楼 明治42年)の復刻に、『怪談百物語』(『新小説』 明治44年
12月号)を加えた、文庫オリジナル編集である。新漢字・新仮名遣いに
なっているが、古風な原文の趣きは、よく伝わっていると思う。副詞も
多くが漢字で記され、ルビがあちこちで飛び跳ねる。

 『怪談会』のほうは、語り口の古めかしさを味わうしかなく、正直なところ、
パターン化された怪談の退屈さが強い。そう思っているうちに『怪談百物語』
が始まり、柳田國男『己(おの)が命(いのち)の早使(はやづかい)』で、パターン
化の歴史が語られる。

< 「遠野物語(とおのものがたり)」に、ああ云った風な話を、極(ご)くうぶの
 ままで出そうとした結果、鏡花(きょうか)君始め、何だ、幾らも型(かた)の
 ある話じゃないか、と云うような顔色(かおつき)をした人が、段々(だんだん)
 あったけれども、負(ま)け惜(おし)みのようだが、自分は、あれを書いてる時
 から、あの話が遠野だけにしかない話だとは思っていなかった。寧(むし)ろ、
 西は九州(きゅうしゅう)の果(はて)にまで、類型のあるのを、珍重したくらい
 だった。>(p184)

__という前置で、同一型の話をいくつか挙げ、さらにその話の元型と思われる
「今昔物語」中の話、さらにその元型であろう、中国の顧炎武「山東考古録」が
紹介される。まるでマトリョーシカを見ているような按配だが、マトリョーシカ
とは逆に、小さな人形から徐々に大きな人形になって行く。

 怪談の語り口、書きっぷりも、たった2年の違いなのに、後者のほうがモダーン
である。
 タイトルからして、坂東薪左衛門『私を悩ました妖怪(ばけもの)』や、水野葉舟
『取り交(ま)ぜて』と、大正期が近づいている。

 『取り交(ま)ぜて』は、怪談というより奇妙な夢の話が多い。

< 高橋五郎(たかはしごろう)氏に聴いた話である。同氏の親戚の某氏が、
 或る晩に甥の某氏と同じ部屋に寝た。その時分に親戚に病人が有った。
 その病人がその晩に、夢に某氏を尋ねて来て、快談(かいだん)して帰った。
 翌朝眼が醒めたから、某氏は甥の某氏にその夢の話をした。すると甥も
 それと同じ夢を見たと云った。
  病人は、それから三四日経(た)って死んだ。通夜の晩に、その病人を看護
 した看護婦がまた不思議な夢を見たことを話した。丁度(ちょうど)某氏等(ら)
 が同じ夢を見た晩と同じ晩の同じ時刻に、その病人が『今、自分は、色んな
 人に逢(あっ)て、色んな愉快な話をして来たので、宣(い)い心持(こころもち)
 になった』と言った夢を見た。>(p282~283)
__夢のロンドだ。

 夢話から始まった『取り交(ま)ぜて』は、夢の話で終る。

< これは学友某の実見(じっけん)である。夜中になると戸棚から、今まで
 見た事もない素敵な美人が出て来て、辰雄(たつお)さん、此方(こちら)へ
 光来(いらっしゃ)いなと無理に誘い出す。翌朝になると、屹度(きっと)蚊帳 
 (かや)の外へ半身を出している。しかもその友は辰雄という名ではないの
 である。>(p286)

     (東雅夫 編『文豪怪談傑作選・特別篇 百物語怪談会』
     ちくま文庫 2009年3刷 J) 





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by byogakudo | 2016-02-09 19:59 | 読書ノート | Comments(0)


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