2016年 02月 12日

イーヴリン・ウォー/吉田健一 訳『ピンフォールドの試練』半分

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 1957年刊行のサイキデリック小説かしらんと思いながら、半分
くらい読んできた。

 50歳になったイギリスの人気小説家、ギルバート・ピンフォールド
が主人公(田園地帯に住み、年下の妻は農場経営に力を入れる)だが、
心身の不調に陥る。

 ピンフォールドは不眠症なので、25年にわたり睡眠剤をいろいろ試し、
この10年は主治医の
<ドレーク先生に黙ってクロラルとブロマイドがはいっているある種の
 ものを、ずっと昔にもらった処方箋を使ってロンドンの薬屋で作らせて
 飲んでいた。>
 夜中に原稿の訂正や再訂正したりするし、
<彼は何もしないで過ごした日でも、六時間か七時間は眠ることが必要で、
 [略]
 その六、七時間の睡眠を、彼が飲んでいる薬は間違いなく彼に与えて
 くれた。>(p20)

 だがしかし、である。

< 彼が用いている眠り薬の成分は、最初の処方によれば主に水だった。
 それで彼は薬局の人に、その薬に水をまぜないで作ってもらって自分で
 水をたすほうが簡単でいいといって、それが苦い味だったから、いろいろ
 とやってみた後で薄荷(はっか)入りのリキュール酒とまぜるのがいちばん
 飲みやすいことが解った。彼は薬の分量をたいして正確に計ろうともせず、
 そのときの気持ちしだいの量をコップに注ぎ、それがたりなくて夜中に目が
 覚めれば、寝台から半眠りで這(は)いだしてまたまぜて飲んだ。>(p28)

__それ、マズい。量もたぶん規定量より多くなっている睡眠薬を、
さらにアルコールで割って飲むんだから。

 かくて、クリスマス明けには、

<それまでにかつてなかった烈しい関節の痛みが彼のからだじゅうを襲い、
 ことに足、踝(くるぶし)、および膝の痛みがひどかった。ドレーク先生は
 再びどこか温かい所に転地することを勧め、新製品で相当に強いという
 薬を処方した。それは大きな灰色の錠剤で、
 [略]
 彼はそれをそれまでのブロマイドとクロラル、薄荷入りのリキュール酒、
 葡萄酒、ジン、ブランデー、および先生がほかにも彼が眠り薬を飲んで
 いるのを知らずに新たに処方した睡眠剤に加えて用いた。>(p32~33)

__mother's little helper なんてものじゃない。

<一日分の、けっして多いとはいえない量の葡萄酒とブランデーを飲んだ
 後は顔が変に赤くなり、そのうちに手の甲に赤い斑点が現れた。>(p28)

__薬物アレルギー症状である。

<彼の記憶がおよそ当てにならなくなったことだった。彼が忘れっぽくなった
 というのではなくて、細かなことまではっきり覚えているのだったが、それが
 間違っているのだった。>(p29)

__たんに忘れるほうが、まだましな、贋の精妙な記憶...。

 ピンフォールド夫人は心配してロンドンまで、ついてきてくれた。ただ彼女には
農園の仕事があるから、船旅をつき合うことができない。ロンドン行きの列車の
中で、ピンフォールド氏はすでにヨレヨレである。被害妄想的になり、乗船するや、
やたらとリアルで生き生きした(?!)幻覚に日夜襲われる、大冒険が始まる。

     (イーヴリン・ウォー/吉田健一 訳『ピンフォールドの試練』
     白水uブックス 2015初 帯 J)

2月13日に続く~

 
 丹生谷貴志氏の2016年2月11日twitterから__
<・・「芸術家」は本源的荒野に柵を作る。「愛好家」はその柵で荒野が囲まれ
 あたかも馴致された光景を嘆賞し花見をする。無論「芸術家」はと言えば柵が
 できるや「柵の向こう」に出てしまっていてそこには荒野だけしかない。柵など
 どこにもないのだ。「芸術家」の営為を徒労というのは余計なお世話なのだ>
(https://twitter.com/cbfn/status/697999116605894656)





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by byogakudo | 2016-02-12 21:06 | 読書ノート | Comments(2)
Commented by saheizi-inokori at 2016-02-12 21:29
うーむ、最近の足のしびれはそのせいか、よく眠れるのはいいけれど。
Commented by byogakudo at 2016-02-12 22:06
きっとそうでしょう。ご用心。


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