2016年 03月 20日

中野区本町6-44-9 喫茶[ε] (「え」)

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 写真は、いつだったか、新宿で。

 春先はこんなに温度変化が激しかったっけ? 温度差について行けない。
ふらふらする。
 20歳8ヶ月の猫は、先日、後ろ肢を引きずっていたが、彼女の場合は、
病院で注射してもらうと治る(いまのところ)。義母も、あちこち痛いと
いうけれど、まあ元気。Sとわたしが二人して不調を託つ。なんだろう、
これは? 
 病いではなく経年劣化の速度に認識が追いつかず、心身のバランス
が崩れる、ということだと思う。経年劣化(加齢)の進行状況の一つ
としてノートしておこう。

 Sよりは多少ましな体調なので、昨日は雨が止んだ午後、ひとりで
近所の見廻りをした。白い菫を見かけたことのある駐車場脇では、まだ
葉さえ見ない。もう一カ所の白菫スポットも、まだだろう。バスの窓から
目をこらすが、地下鉄操車場脇の道路沿い、濃紫色・菫ゾーンも、まだ。
 菫は4月に入ってからだ。

 部屋の前の小公園では、そろそろ雪柳が咲き始めている。裏手の公園の
斜面に列をつくる、雪柳と山吹はどうか? 雪柳は少し、山吹はない。
 緋寒桜が近くに一樹、花盛り。

 近すぎて入りそびれていた、あの喫茶店に入ってみようと思いつく。
 地下鉄丸ノ内線・東高円寺駅を使うときは、道が何筋か違う。帰りに
寄ろうとすると、たいてい、その前にお茶を飲んでいるので入れない。
 桃園川緑道の散歩だと、部屋を出てすぐなので、まだ飲みたいと思わ
ない。部屋とは、微妙な距離と位置関係にある喫茶店だ。

 新渡戸文化学園・正門を背にして右斜め前、美容室と隣り合う、小さな
アトリエ風、喫茶[ε] (「え」)

 道に面して、左側が腰高窓、右側の扉も同じ高さのガラス入り。
 ときどき通りかかっていたので、その度に少しずつ店内が出来上が
っていく様子が窺われたのだが、入って右側には壁画が描かれていた。
 正面奥が白いレジ兼カウンターと小キッチン。店内の基調色は白と
ベージュ(床板のつなぎ目模様がいい)、外側(窓と扉)はダークな
色合いで引き締める。

 腰高窓の前と、入って左手が、主な座席である。
 椅子がうれしい。座面が低いからSの腰には不安な部分があるが、ちゃんと
詰め物のある安楽椅子だ。東高円寺界隈にも、たぶん若いひとが始められた
ような喫茶店が目に入るようになったけれど、覗くと大体は、堅い木の椅子で、
あれは、わたしたちは坐れない。

 壁画の前に、使われていないプレイヤーとレコード盤が置かれた、引出し付き
デスクと椅子。そしてレコード・ボックスと、木綿の肌が古びたトルソと。
 音源はCD、かかっているのはモダーンジャズ。小空間を充たす、適度な音量だ。
 入口に近い、向かい合う席は、詰め物のある折りたたみ椅子。卓上にはピンクの
薔薇が一輪。デスクの方には赤いチューリップ、一輪。それぞれ、寒色系の壁画
にアクセントをつける。壁画はたぶん、元の薄茶色になった壁面を活かして描いた
(あるいは汚しをかけた?)のではないかしら。

 色彩設計といい、椅子の配置といい、ひとりでぼんやりと過ごすのに快適な
空間だ。壁画の上方には白い棚を支える金具が三本。棚は、いずれ間接照明
にでも使われるのだろうか? 白い板がぐるっと扉や窓をめぐって、わたしの
背後の分割された置物棚にまで及ぶ。
 まるで、部屋の中に、さらに白い板張りの匣がしつらえてあるみたいだ。
通りから眺めたら、坐ってコーヒーを飲んでいるわたしも、ボックス・
アートに封じ込められたオブジェのひとつになってるのではないかしら? 
おもしろい感触だ。
 
 モノが控えめに置いてある、ヒトが加わってできあがる空間だ。コーヒーも
おいしく、おしぼりとして出された布(白地に小さな黒い水玉模様)からは
ラヴェンダーの香りがする。
 繊細なのに神経質ではない、理想の喫茶店が近所にあった。絵描きである
女性店主の、意志とセンスが伝わってくる。

[3月23日追記:
 プレイヤーはスピーカー内蔵式で、実際にレコードがかけられる。]

3月23日に続く~





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by byogakudo | 2016-03-20 22:03 | 雑録 | Comments(2)
Commented by saheizi-inokori at 2016-03-21 09:33
桃園川のあたり、小学校とか暗渠を急いで中野駅まで(堀之内の自宅から)歩いた通勤が懐かしいです。
日によっていろんなルートを歩いたのです。
Commented by byogakudo at 2016-03-21 12:46
堀之内から桃園川〜中野駅ですか! むかしから毎日、
よく歩かれていたのですね。健脚のベースはそこ、いや
もっと以前からおありなのでしょう。見習わなくっちゃ
(近ごろ、散歩をさぼり気味です)。


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