2016年 04月 01日

瀧口範子『にほんの建築家 伊東豊雄・観察記』半分弱

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~3月31日より続く

 『諏訪/上京/建築家になる』より__
<伊東事務所の所員[略]細谷浩美は、海外の講演で「僕の生まれた
 諏訪には湖があり......」と切り出してせんだいメディアテークを
 説明する伊東に、英語の論理にはない、実に日本的なアプローチを
 いつも感じたという。自分にとって大切なこと、個人的な体験から
 イメージがつくられている。>(p99)

 伊東豊雄の
< 東大入学は1961年。当時の東大工学部建築学科は、丹下健三
 研究室のオーラがあたりにたち込めていた。
 [略]
 丹下研究室からは大谷幸夫、浅田孝、槙文彦、磯崎新、黒川紀章ら、
 如何にも頑強な若手建築家らが前後して巣立ち、その周辺では初めての
 日本発の都市計画と建築ムーブメントであるメタボリズムが醸成されて
 いた。
 [略]
  ちなみに、当時の建築学科の人気は悪い。学部2年の後期から専門を
 選択するのだが、建築学科は第一希望者だけでは定員が埋まらなかった
 ほどだという。優等生ではなく、成績が悪くて運動ばかりしているような
 タイプが集まっていた。
 [略]
  伊東の卒業は1965年、東京オリンピックの翌年だった。>(p102~105)

 同年、アトリエ系建築事務所である、菊竹清訓・事務所に就職、4年後、退職。
その2年後、1971年に自身の事務所を持つ。建築家の世界では"インディーズ"
ではなく、"アトリエ系"というのか。

 『1970年代/若い建築家の頃』は、エディプス神話あるいはカインとアベル
の物語を思い出させる。

< 伊東に続く世代、たとえば80年代にキャリアをスタートさせた隈健吾や
 竹山聖らの世代なら、バブル経済のおかげで独立したその日から仕事に
 ありつけた。ところが70年代に独立した建築家たちは、60年代の国家的
 事業の波には乗り遅れ、80年代の豊かな経済はまだ来ないという、深い
 谷間にひょっこり出てしまったようなものだった。国家的建築への熱も、
 メタボリストたちが大騒ぎした万博が「たったあんなものか」という落胆の
 中で閉幕して急速に冷めた。日本全国で開発が進んでいるが、建設の仕事は
 あっても建築はない。挙げ句に、石油ショックで世の中は不景気。どうにも
 やるかたない気分に浸るしかなかった。>(p112)

 (子どもの頃は東京オリンピックのTV中継から目を背け、若い頃は
大阪万博を無視。わたしは、かなり筋金入りの拗ねものだったのか。)

< 常時うっぷんのたまっていた伊東、石井和紘、石山修武、渡辺豊和、
 毛綱(もづな)毅曠(故人)ら、同世代の建築家たちはしょっちゅう集まって
 酒を飲み、議論を闘わせていた。不器用な上に口うるさく、加えて欲求
 不満。飲み屋に集まって管を巻くという、当時の典型的な日本のビンボー
 若者の風景である。カラオケもよくやった。話題はたいてい上の世代の
 悪口。互いの批判も露骨に言い合う。文字通りハングリー精神がむき出し
 だった。
 [略]
  「今の若い建築家はスマートだし、そんなことをしても疲れるだけだから
 お互いの批判はやらなくなった」と伊東は見る。文章を書いても、その中で
 批判することはほとんどない。脆弱になったとは思わないが、おもしろくは
 なくなったと感じている。
 [略]
  80年代半ばまでずっとそんなことを続けていたが、こうして議論を闘わ
 せたことが、結果的には自分の建築を磨くことに役に立ったと、伊東は
 思っている。>(p114~115)

 他に、篠原一男研究室・周辺で伊東豊雄は、多木浩二、坂本一成、
長谷川逸子、富永譲らと議論する。
 多木浩二の事務所でも、
<伊東、長谷川逸子、坂本一成、家具デザイナーの大橋晃朗(てるあき)
 (故人)らが集まって勉強会をやった。>(p116)

 この章でおもしろかったのは、神話では父王はエディプスに殺されるだけ
の存在だが、70年代の日本の父王たち(磯崎新や槙文彦、黒川紀章など)は、
エディプスたちに堂々と、否定の言辞を投げかけるところ(刃を振りかざして
切り掛かってゆく)、カインもアベルも、お互い黙っちゃいないところ、
であろう。
 言論と思想(と実践)の徒、建築家群像である。

     (瀧口範子『にほんの建築家 伊東豊雄・観察記』
     ちくま文庫 2012初 J)

4月2日に続く~





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by byogakudo | 2016-04-01 22:27 | 読書ノート | Comments(0)


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