2016年 04月 18日

今週のホイホイ(6)/町山智浩『99%対1% アメリカ格差ウォーズ』読了+水上滝太郎『銀座復興 他三篇』

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~4月14日と~4月16日より続く

 いわゆる政治的なニュースは、日本では40歳代以下はインターネット情報しか
読まず、それ以上の中高年齢層はTV情報に頼る(+新聞を読む、生き残り組も)
ように思えるが、町山智浩の本は、もっぱらTVと新聞・雑誌に見られるアメリカの
傾向を紹介する。そしてそれは、頭の痛くなるようなマスメディア戦線のレポートだ。

 とくに大統領選は、フットボールと同じくらい(たぶん。もっとかも?)国を
挙げての一大TVショーらしい。資金をふんだんにつぎ込み、相手候補の失策を
指摘するスポットCMならまだいい方で、明らかなデマであっても、大量に、継続
して、TVで流すと、アメリカ人たちはデマを信じてしまう、ようである。

 "ようである"と、ひとごと視して見下した言い方をしたが、日本のTV及びその
受容状況と、まったく何の違いもない。ナチのプロパガンダ方式はいまだ有効で
あることが、宗主国と植民地とで証明されてるだけだ。うそでも何でも構わない、
大量に朝から晩まで流し続ければ、いつしか洗脳が完成されることの証明である。

 ひとは各人の気質に合った説を信じて、自己保存に勤める生物なので、インター
ネット情報であれ、TVからであれ、新聞何紙かの読み比べであれ、そこから好きな
情報を得て自分の世界を構築し、日々、強化するだけなのかなあ...。オバマが
イスラム教徒だと信じるティーパーティ派やそこらは、いまだにそう信じている
であろうし。

 町村智浩の文庫版まえがきに、さらっと
<アメリカの政治に起ったことを、カリフォルニアに住む筆者の目線からレポート
 しています。>(p9)__触れてあるように、まったくの中立目線など、ひとには
不可能だ。

 極右とリベラルに分断されたアメリカから、町村智浩はリベラル目線でレポート
する。大統領選に立候補する前のバーニー・サンダースの行動を初めて知った。
 日本の新聞にも報道されていて、わたしが読んでなかっただけかしら?
 
 ブッシュ減税(の延長)のおかげで99%がどんな目に遭っているかを、サン
ダース上院議員(2010年12月10日、当時69歳)は、8時間半に渡って語り続けた。

< 「07年には、アメリカで最も富める上位1%が国民全体の収入の23・5%を
 独占する事態になりました。上位1%の年収はアメリカの下位50%の国民すべて
 の年収を足したよりも多いのです」
 [略]
  「クリントン政権は必死に財政赤字を削減し、任期の終わりには黒字に転じて
 いました。それがブッシュ政権でいっきに史上最大の債務に落ち込んだのです。
 その原因は、金持ちへの無茶な減税、理由なきイラク戦争、ウォール街の詐欺師
 どもによる金融危機、そして破綻した彼らの会社を救うための公的資金投入です。
 [略]」>(p131~135 『第2章 保守vs.リベラル 壮絶メディア・バトル』)

 『第3章 オバマがイスラム教徒だと信じるアメリカ人』に、『東日本大震災
をアメリカはどう捉えたか』(2011年3月)があり、その中の『悪魔に魂を売った
「ファウスト」たち』の冒頭は、

< 石原慎太郎都知事はこの地震を「天罰だ」と言って顰蹙(ひんしゅく)を
 買ったが、アメリカでも保守系ニュース専門テレビ局FOXニュースの人気
 司会者グレン・ベックが「あの地震は神からのメッセージだ」と発言した。
  アメリカでは天災が起こるたびに「神の裁きだ」と言う連中がいる。
 [略]
  しかし、福島第一原発が水素爆発を起こすと、天罰という声も消えた。
 地震地帯であるカリフォルニアにも2つ原発がある。また、福島の原発は
 アメリカのGE製だ。ABCテレビは、GEで35年前に原発を設計した技術者
 たちが冷却システムの脆弱性を警告したが受け入れられず、抗議の意味で
 辞職したという過去を報道した。同型の原発はアメリカに何基もある。もはや
 対岸の火事ではない。>(p161~162)

 「天罰」発言の石原慎太郎は、花見も止めろと言って、福島のひとたちから
そっと窘められたっけ。ここで水上滝太郎『銀座復興』の老政治家の描写を
思い出した。

< 大きく体をゆすって、老人は笑った。西洋模倣の東京が灰になったのを
 痛快がる色が明(あきら)かだった。しかも、その焼土の上に、更(さら)に
 根強い西洋模倣の文化がはびころうとしている事には気がつかない。かつて
 は、新聞や雑誌に絶えず噂の出た、国粋主義の政治家だった。豪放磊落
 (ごうほうらいらく)小事に拘泥(こうでい)しないと云う型の流行(はや)った
 明治初年に運よくぶつかったおかげで、落第し、女郎買をし、びりから一番で
 大学を出て、官界へ身を浮べ、泳がないような風をしてその実巧(たくみ)に
 泳ぎ廻り、常に忠君愛国を説き、現代の文化を罵(ののし)り、酒をあおりつつ
 立身した人物だ。>(p33)

 まあ、石原慎太郎といわず、自民党のある種、伝統的・政治屋像__こわもて
ブリッコのマザコン爺どもである。

     (町山智浩『99%対1% アメリカ格差ウォーズ』 講談社文庫 2014初 J)

     (水上滝太郎『銀座復興 他三篇』 岩波文庫 2012初 J)





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by byogakudo | 2016-04-18 21:00 | 読書ノート | Comments(2)
Commented by saheizi-inokori at 2016-04-18 22:11
チョムスキーが、アメリカ人のほとんどは新聞も読まないし、テレビのニュースも見ない、だからアメリカが何をしているかなんて知らないのだ、と書いていました。
日本にも当てはまるようです。
東大の入学式で学長が「新聞を読め」とシャレでなくいったようですし。
Commented by byogakudo at 2016-04-18 22:28
じゃあ、アメリカ人はどうやって彼の思想(?)を形成する
のでしょう?
東京新聞が、ふだんネット情報しか見ない若手に新聞批評を
してもらったとき、縦書き記事の続き方(飛び方)が分かり
にくいという意見があったと覚えていますが、十字キー以外の連結が読み取れないのは、ほんとにデジタルで育ち過ぎてる、と思います。


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