猫額洞の日々

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2016年 05月 17日

アンドリュー・ヴァクス/佐々田雅子 訳『ハード・キャンディ』読了

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~5月14日より続く

 アメリカは民主主義国家だ。本場であろう。三権分立が確立されている。
しかし実際は、お金がものを言い、同じ罪を侵したとしても貧乏人だけが
収監されて罪を償う。
 (独裁国家に民主化を迫るという論理で、他国を攻撃する資格がある
とは思えないが、兵器産業がGDPの一大部門の国家なので仕方ない、と
いうのだろうか。)

<その医者はアンドロラン、マロゲクス......注射できるテストステロン(男性
 ホルモンの一種)ならなんでも売っていた。針さえあれば注入できるという
 わけだ。最近は、子どもに欲情する変態どものための新しいプログラムが
 ある。精神科医にはまだわかっていない__変態どもは治療してほしいなど
 とは思っていないのだ。この新しいプログラムは、ごく一部の変質者向きだ。
 カネのあるやつでないと受けられない。カウンセリング、心理療法......
 それにデポ-プロヴェラ。一般に化学的去勢といわれているものだ。性的衝動を
 ほとんどゼロにしてしまう。それで変態どもは、たとえ子どものそばにいても
 無害になると思われている。子どもをレイプするやつらにメタドンを与える。
 判事の中にはそれを好むやつもいる。変態どもはそのプログラムを大歓迎して
 いる__それが檻から解放されるお墨付きになるからだ。うじ虫どもは科学者
 やその公式見解などよりよっぽど事情に通じている。やつらはテストステロンを
 きちんと服用しているうちにデポ-プロヴェラが無効になってしまうことを知って
 いる。やつらがいうノーマルな状態に戻ってしまうのだ。
  テストステロンは麻薬ではない。どれくらい投薬しようと連邦当局がチェック
 することもない。その医者はよろしくやっているわけだ。>(p172~173)

 バークとその仲間たちは、子どもに対する性的虐待を絶対悪とみなす。司法が
無力で無効な悪には、悪の力で倒すしかないと思っている。倒すついでにお金も
稼ぐ。
 テストステロンを処方する医者宅に押し込んで、隠し財産を盗み全員で分ける。

 前作『ブルー・ベル』で、バークを救うために犠牲になったブルー・ベルへの思い
と後悔の念が彼を苛む。彼女の仇は討ったが、空虚感は充たされない。バークは仕事
(つまり盗みや詐欺という犯罪行為)に励んで自己回復を図る。

< アマチュアは一文なしになったときに盗む。だが、おれはプロだ__それを
 商売にしている。
  痛みはやまなかった。そのまま続いていた。>(p176)

 警察や司法の力では正義が実現できそうにない悪の世界だが、さまざまな勢力
が混在する。バークとそのチームのような謂わば中小企業、まったくの一匹狼、
マフィアやシンジケートといった大組織、ただのチンピラ...、種々様々。

 バークは殺し屋ではない。必要に迫られて(?!)、殺さなければ殺されるからと
いう理由で専守防衛的(!)殺人は犯したけれど、そのせいで警察からもギャング
組織からも追われる羽目になる。
 絡み合った悪の世界での生き残りを賭けた生が描かれるが、私的制裁を加えるって、
ガーディアン・エンジェルスの思想、さらにはリンチの思想に通じてしまいそうで、
そこらは、作者・ヴァクスはどう考えているのだろう?

     (アンドリュー・ヴァクス/佐々田雅子 訳『ハード・キャンディ』
     ハヤカワ文庫 1995初 J)

5月18日に多少続く~





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by byogakudo | 2016-05-17 15:05 | 読書ノート | Comments(0)


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