2016年 07月 02日

アンドリュー・ヴァクス/佐々田雅子 訳『サクリファイス』読了

e0030187_23355573.jpg












 主人公バークが、インディアナから戻ってきた。ニューヨークに戻ると、
ふたたび地獄の日常が、淡々と始まる。

< おれがインディアナで手にしたもの__家族の絆の短期リース契約
 __はもう消滅した。おれは地元に戻ったのだ。[略]
 ラジオをニュース専門の局に合わせてみた。自分の赤ん坊を殴り殺した
 うえで切り刻み、シェパードに食わせたやつがいる。当局がその後始末
 をした。犬は殺された。>(p101)

 メイン・ストーリーは、性的虐待を受けたトラウマから多重人格になり、
ある人格のとき赤ん坊を殺した少年、ルークをどう救うことができるか、だ。
サイドにニューヨーク地下世界の様相が描かれ、いくつかがバークに関わって
くる。巫女が統べるヴードゥーの社会、銃の密売組織その他。

 ルーク少年の話の背景に見えてくるのは、バークの子ども時代だ。ルークの
物語を語りつつ、バークの幼少年期を描いているのだろうが、プロットに次の
プロットが重なり、登場人物が輻輳し、なんだか話がごたごたして、あんまり
うまく行ってない。エピソードを連ね、互いに反響させて、重層的に語ろうと
したのは意欲的だけれど。

 ご贔屓のミシェルが今回も不在だが、銃の密売組織から派遣された、見習い
兼ボディガードのクラレンスが、いい味。

     (アンドリュー・ヴァクス/佐々田雅子 訳『サクリファイス』
     ハヤカワ文庫 1997再 J)





..... Ads by Excite ........
[PR]

by byogakudo | 2016-07-02 16:50 | 読書ノート | Comments(0)


<< 7月10日(日)の前に      人形町へ >>