2016年 07月 14日

山川静夫『歌右衛門の疎開』読了

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~7月13日より続く

 昨日、引用した『わが声色修業』の続きをもう少し。

 文化放送「素人ものまねコンクール」に「勘三郎・猿之助の歌舞伎声色」
で応募して、"今週のナンバーワン"にえらばれた山川静夫は、その年の秋、
日比谷公会堂で行われた決勝大会に出場し、第三位。

<それ以来、あちこちの放送局からお声がかかり、ニッポン放送の
 「素人ラジオ演芸会」や、ラジオ東京の「しろうと寄席」にも
 盛んに出演した。>(p16)

 1953年ころ大学生だった山川静夫の一日の食費は100円。朝はパンと
牛乳で20円、昼・チャーシュー抜きのラーメンが30円、残りの50円で
夕飯の生活だったそのとき、
<民間放送の一等賞金二千円>(p16)である。だから芸に励んで出演する。
NHKにも素人参加番組はあるけれど、賞金が出ないから、学生たちは出ない。

 賞金だけでなく、本物の中村勘三郎と知り合い、声の黒子として共演する
話が、続編『声色仕掛人』にある。

 『久米さんの野球事始』は、終りのほう、金属非常回収実施で、金属を強制
供出させられるシーンがクライマックスだ。アマチュア野球大会でもらった
首位打者のカップの一つを取り上げた久米正雄が、カップをしばらくじっと
見つめて涙を流す。

< と、久米さんは突然、手にしたカップを力一杯ポーチのコンクリートに
 たたきつけた。カップは激しい音をたててころがったが壊れなかった。
 それを見ると今度は物置からハンマーを取り出して来た。受取人はおびえた
 ように二、三歩後へ退いた。久米さんは無言のままカップの上へとハンマー
 を振りおろした。そして頬を涙でぬらしながら金銀の器を次々に打ち砕いて
 いった。>(p157)

 ここに至るまでの、戦前のエピソードとの対比が明らかだ。
 作家チームと六代目菊五郎率いる歌舞伎役者チームが対決した。「東京」と
いう雑誌に出ていた、文士チームのメンバー表(兼・評)が紹介される。

< 投手 久米正雄(やけやすし)
  捕手 佐藤八郎(一名おめんいらず)
  一塁 国枝完二(名人なり)
  二塁 田中純(小利口なり)
  三塁 仲木貞一(先生なり)
  遊撃 里見弴(作品通りの利口さ)
  右翼 宇野浩二(看板なり)
  左翼 加納作次郎(勇気若者をしのぐ)
  中堅 山上紀夫(投手に代るが宜し)
  補欠 国木田虎雄(時に打つ)>(p152)

 
     (山川静夫『歌右衛門の疎開』 岩波現代文庫 2003初 J)





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by byogakudo | 2016-07-14 16:06 | 読書ノート | Comments(0)


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