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猫額洞の日々

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2016年 07月 15日

(1)佐藤春夫『たそがれの人間』を読み始める

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 平凡社ライブラリーの怪談シリーズである。久しぶりにライブラリー版
を買ったら、開きがよくなってるような気がする。たんに厚みが少ない
からだろうか? これが全383頁(2015年刊)、『椿説泰西浪漫派文学談義』
が399頁(2012年刊)。この2冊は持ってみて、そんなに違いを感じない。
 しかし、ページ数がそれほど変わらない(401頁)『大東京繁昌記』は、
ぐっと重みを増し、その分、開きも多少悪く思える。これが1998年刊。
紙質が変わってきたのだろうか。
 全604頁の『逝きし世の面影』(2007年刊)を開けてみると、手が小さい
から文庫版に比べてライブラリー版を、やや読みにくいと感じるのか、という
気もしてきた。

 道端で妙な円筒状の"異象"にぶつかる話、『歩上異象』から引用する。
 インテリの主人公は立ちすくむだけだが、闇屋のあんちゃんは語り手の
持つステッキを取り上げて"異象"をなぐりつけようとする。__

<手を触れて見るだけの勇気さえ出なかった自分と思いくらべて、この
 行動派の勇敢に感心しながらも、勇敢はいつも無知に近いのを惧(おそ)れ、
 神秘の扉を開くのはわけもないがそれを閉すことは困難であると云われて
 いるのを思い出して、そういう無法な事を敢てする結果が、どんな事態を
 惹き起すかを内心びくびくしながらも真実を知るためには往々この種の
 蛮行をも是認しなければならないという傍観者の勇気だけは失わないで
 わたくしは怪物と格闘するドン・キホーテを傍観するハムレットのように
 ひかえていました。>(p23~24)

 日本語、うまいなあって、作家に対してなんて失礼な。

     (佐藤春夫/東雅夫 編『たそがれの人間 佐藤春夫怪異小品集』
     平凡社ライブラリー 2015初 帯 J)

7月18日に続く~





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by byogakudo | 2016-07-15 21:35 | 読書ノート | Comments(0)


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