2016年 08月 15日
写真は昨日のデュランタ。 8月13日付け東京新聞朝刊4面『考える広場』というページに、 『憲法9条の未来』と題して、三人の新聞記者が三人のひとに 聞いてまとめた記事があった。 紙面のいちばん右が石破茂『不戦のための改憲必要』、紙面・ 真ん中が加藤典洋『現実的な平和主義を』、いちばん左が女性で 青井未帆『大戦の反省忘れずに』、という視覚的にもわかりやすい 紙面構成である。 (読んだことがない)文芸評論家・加藤典洋の聞き書きに引っかかる 点が多々。 <日本の政治は親米・軽武装・経済志向という吉田茂政権以来の ドクトリンを守ってきましたが、そういう弥縫(びほう)策ではもう 無理です。一つは、自衛隊員の身分保障があいまいなことによる 問題発生が安保法で現実味を帯びてきたこと。もう一つは沖縄。 米軍基地集中による負担感が限界に来ています。 [略] 現実的な平和主義を徹底するよう[略]僕は日本の陸空海軍の 戦力を国連待機軍と国土防衛隊に分けることを提案しています。 交戦権を国連に移譲することで国連中心主義を明らかにする一方、 国民の自衛権を認めます。 護憲派のように対案がないのは怠慢。[略] リベラル・革新系はいまや、現実にぶつかることを通じて理念を強靭 (きょうじん)なものにしていく新しい行き方を考えるべきなのです。> (聞き手・大森雅弥) __<国連待機軍>? またしても国連信者か。ださい。 現実を無視してお題目を唱えるような、ずさんなスローガン思考を排し、 知的に誠実に思考する。 出発点はまあいいとして(しかし国連教徒は、たとえばイラクから見れば 英米軍だ)、いつかすっかり相手の土俵に乗っかって思考し発言するという、 知的にも政治的にも致命的なヘマを犯す。(団塊の世代の)男って、どうして こんなに"しっこしがない"のか。 <対案がないのは怠慢>って、ヤクザのお達しに対案を提出しないのが 怠慢だというのか。 現状に対して抗戦するより、字面にこだわり、自己完結的な知性の追究を 試みる方ほうが、より低エネルギーですむし、知識人ぽくも見えるから? 1930年代のインテリたちもこのようにして、自分の立ち位置をずらして 行ったのだろうか。知的であろう、自覚的であろうとして、逆に泥沼に足を 踏み入れるような。 日本が世界史に公式デビューした/させられたのを1868年と仮定すると、 日本国の歴史はまだ148年かそこらだ。国家として若いせいもあるのかしら、 どうも世慣れてない。スレてない。たとえばイギリスの食えなさを見習って みたら、どうだろう? AIIBができた途端、アメリカとのつき合いの歴史的経緯なぞなかったかの ように真っ先に参加する、キャメロン政権下のイギリスのこすさ(その直後に 追随する、ドイツその他のヨーロッパ諸国の素早い身ごなし!)なぞ、ぜひとも 学習すべき、えげつない政治的振舞いだと思うが。 キャメロンから代ったメイ首相も芸がある。中国とのつき合いに少し距離を 設けることで、イギリスに潜在力があると見せようとする。 アメリカに何か言われる前に、アメリカはこう望んでいるだろうと先読みして ヘイコラしちゃう、ポリシーのない(?!)日本国の役人や政治屋とのちがいは、 どこから来るかというと、やはりスレ方・世慣れ方に差があり過ぎるからでは ないかしら。 加藤典洋に言われるまでもなく、戦後の日本は東西冷戦の中空状態に便乗 して、欺瞞の共同体を生きてきた。沖縄を第三世界化することによって、地方に 原発を押しつけることによって、杉並区は江東区にゴミ処理場を押しつけること によって、杉並区民も日本の市民も自衛隊員も、平和と安寧を享受し、手を汚す ことはなかった。 それくらいの自意識や、比較級的な加害者であるという自己認識はあるけれど、 だがしかし、ここで居直らなくてどうする? 国内外の他者に戦争や原発という悪を押しつけてきた結果ではあるが、それでも 戦後70年間、戦争をしない日本国が存在している。ここに立脚しないで、すぐさま 右側の土俵に飛び移ってしまう知識人って、なにさ。 ここで居直るための論理だって、ドゥンス・スコトゥスみたような精妙でアクロ バティックな操作は要さない、と思う。(スコトゥスは一度、鈴木創士氏から解説 していただいて、そのときは分かったが、いまや雲散霧消。) から元気でも居直って見せて、それからロジックをつくり出したって、いいじゃ ないか。
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by byogakudo
| 2016-08-15 21:34
| 雑録
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Comments(2)
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saheizi-inokori at 2016-08-15 21:46
そうなんだなあ、きれいごとじゃない、もっとこすっからく開き直って9条を守らなきゃね。
0
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byogakudo at 2016-08-15 23:26
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