2016年 08月 20日

プリーストリー/安藤貞雄 訳『夜の来訪者』読了

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 ミステリのお師匠さんからチケットを頂いた。船堀での劇団フーダニット
9月公演である。演目が『夜の来訪者』ということで予習を兼ねて、B・Oで
たまたま買っていた文庫本を読む。

 お師匠さんは演劇青年でもいらしたから、内村直也 訳の三笠書房版を
読まれているだろうが、こちらは文庫版が初読。よくできてるのに、
びっくり__というくらい、演劇にも無知である。

 第二次大戦が終わった後、1945年に書かれた戯曲で、時代設定は
第一次大戦やロシア革命前の1912年、場所はイギリス("ミッドランド
地方北部の工業都市ブラムリー"と記されている。)のブルジョア家庭。

 娘の婚約発表でもあるディナーの折に、発音から食屍鬼とも取れる
グール警視が訪れ、彼らのせいでひとりの女性・元工場労働者が自殺
したことを告げ、彼らの日常を揺らがせる。

 全三幕のうち、起承転結の起と承が第二幕まで。ここまではブルジョア
の怠惰さ・腐敗を告発する社会派ドラマかと思っていたら、最後の三幕目
に至って、転が一気に詰め込まれ、結で劇の位相にパースペクティヴが
もたらされる。

 時代が、1912年からナチズムの悪が知られた第二次大戦後にまで前進
(社会的平等を目指した、共産主義国家・ソ連邦が存在する時代までの
前進でもある)と同時に、わたしは不和をもたらすために現れたと告げる
キリストの時代にまで遡る、パースペクティヴの拡大だ。

 プリーストリー『夜の来訪者』は、まるでパゾリーニ『テオレマ』である。
まさか、こんなことになるとは。

     (プリーストリー/安藤貞雄 訳『夜の来訪者』
     岩波文庫 2007年6刷 J)
 





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by byogakudo | 2016-08-20 15:35 | 読書ノート | Comments(0)


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