2016年 09月 23日
梶山季之が現代を舞台にして書く小説は、風俗小説というだけで なく、情報小説の面がかなり強い。 最初の『寅市登場』では、1964年度・東京オリンピック直前の ナイトクラブのホステスと、バーやキャバレーに勤める女性との給与 体系のちがいが、まず記されている。 ナイトクラブに勤めるヒロイン、桜瀬瑛子(さくらせ・えいこ)の職業は、 <いわゆる"夜の蝶">であると紹介される。 一文の続きを読むと、"夜の蝶"は<銀座や新宿あたりの、バーやキャバ レー>勤めと認識されているようだ。こちらは作中では女給と称される。 戦前のカフヱの女給の延長と見なされているのか。 赤坂のナイトクラブに勤める瑛子は、新種の夜の蝶なので(?)、 ホステスと呼ばれる。(いまでは、バーでもキャバクラでもホステス だろうが。) そして女給とホステスでは給与の支払われ方が異なる。 バーやキャバレー勤めの女給たちは、固定給+チップや歩合。64年ころ だと、銀座のバー勤めで日給1500円前後だ。瑛子の場合、ひと月6万円 にならなかった。 ナイトクラブのホステスは固定給ゼロ。指名料(1時間1000円)で稼ぐ。 <従って、客の指名がなければ__言い換えると、大勢の客を持っていな ければ生活できない。> 7:30pm出勤の早番と、8:30pmまでに出勤の遅番があり、閉店が0:30 amころ。正味約4時間で勝負する。 瑛子はナイトクラブに移ってから、少ないときで月10万円、多いときには 16、7万円以上稼ぐようになった。指名料の他に"お握り"と呼ばれるチップ があるからだ。店では原則として禁じられた行為だが、 <外人客は特に気前がよくて、使い残りの日本円を全部チップに握らせて くれたりする。>(1ドル=360円の時代である。) 平均ひとり頭5000円のチップとして、もし一晩に6組から指名されれば 3万円だ。(P3~4) 超高級取りだけれど、ギャンブル性が強い。『のるかそるか』の世界が 始まる。 (梶山季之『のるかそるか』 集英社文庫 1977年3刷 J) 9月24日に続く~
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by byogakudo
| 2016-09-23 22:07
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