2016年 09月 26日

(3)梶山季之『のるかそるか』読了

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 写真は昨日の流木。ガルシア=マルケス『美しい水死人』みたいな。


~9月24日より続く

< ハワイは、日系米人の島だった。
  広島、和歌山あたりからの移民が多く、ハワイの日本語は、広島弁が
 標準である。
  [略]広島弁の会話が、ハワイの土地では、日本語として幅を利かして
 いる。ある意味では、純粋な広島の言葉は、ハワイに残されているの
 かも知れなかった。>(p98)

 ヒーロー、ピート・河野の母語は英語だ。日本語は広島弁を喋るけれど、
読み書きはできない。英語を解するヒロイン、桜瀬瑛子の協力を得て、
大風呂敷な自転車操業を実行し、成功させる。
 詐欺やペテンは大規模であるほど、人々に信頼される。数字のもつ回転
運動は、彼らの周りの小規模なペテン師の運動を巻き込み、より巨大化する。
 フィクションとして自律するのだ。国家や貨幣経済というフィクションに
並び、少なくともその一部に組み込まれ、詐欺はもはや詐欺ではなくリアル
な経済活動と見なされるようになる。

< 千載一遇のチャンス! 金儲けのアイデアよ、こい!
  もちろん、東京オリンピックが、日本にとっては最初の、そして二十世紀
 にはふたたび訪れることのない、滅多にないチャンスであることは、誰でも
 知っている。
 [略]
  みんなそれぞれに、オリンピックで儲けようとは考えている。しかし、ピート・
 河野は、オリンピックで儲けようとする人々を相手に、ちゃっかり金を稼ぎまく
 っているのであった。>(p363~364)

 スポーティな悪漢小説。

 <二十世紀にはふたたび訪れること>がなかったのに、右肩上がりの成長
神話しか信仰を持たない輩が、21世紀にふたたびのオリンピックを呼んで
しまった。二度目は喜劇として? いや、たんに濁りきった不幸の到来だ。

     (梶山季之『のるかそるか』 集英社文庫 1977年3刷 J)





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by byogakudo | 2016-09-26 20:47 | 読書ノート | Comments(0)


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