2016年 10月 05日

鈴木創士氏のコラム『第79回 絶腸亭日乗』+(4)桜井哲夫『「戦間期」の思想家たち』読了

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 10月の鈴木創士氏のコラムは『第79回 絶腸亭日乗』。タイトル通り、
この一ヶ月ほどの記録だ。

 9月2日、高田馬場で行われた「未知のアントナン・アルトー」という
トーク・イヴェントの話のあとに、

<余談ではあるが、かつての私のように何もしていない人、何もできない人は
 いないのであろうか。日本には、アルトーに関心があって、芸術や文学など
 やらずに、飲む、吸う、射つ、だけの人はいないのであろうか。>

__思わず微笑む。(鈴木氏は谷崎はお好きではないようだが)近ごろは
とみに愚かという徳が失われているので、無為のひとは存在できないのです。

 映画『鬼火』でモーリス・ロネが昔の友人宅を訪ねるシーンを思い出す。
 みんな無茶苦茶だったのに、中年を迎えた現在、かつて否定したプチブル
生活に戻って、晩餐をともにしようとしている。仕事を持ち、家庭を持ち、
それなりの地位と守るべき生活に、こじんまりと強固に収まっている。
 自分はと言えば、恋をする相手はまだいるけれど、生活をともにする相手
はいない。相変わらず、ふらふらと漂っている。食卓に着いている彼らに、
 「おまえも、おまえも、みんな裏切り者だ」と、恨み言を言い募る。

 (また横道にそれるが、"プチブル"の日本語訳は"内福"ではないかしら? 
どうも日本語で"プチブル"というと、中流の真ん中ほどと理解されている
みたいだが、フランス語の"プチブル"ってかなりお金持ちを指すと思う。)

~10月4日より続く

 恋愛の話というとピエール・ドリュ=ラ=ロシェルが登場する、桜井哲夫
『「戦間期」の思想家たち』であるが、『第五章 政治セクトの時代』では
右翼と左翼の混淆・往来がひしめき合って結局よく分からない。(ここらは、
今の日本の危機的状況を考えるとき、参考になりそうなのだが。)
 おまけに反ユダヤ主義がある。これが全く分からない。生理的に理解
できないのだと思うが。

<高等中学校や受験準備学級の時代、アルチュセールは熱烈というほど
 ではなかったのだが、王政主義の支持者であり人民戦線には敵対して
 いた。当時の彼には、人民戦線は「フランスを下層民(la populas)と
 ユダヤ人の手に譲り渡す」ものだったのだ[略]。>(p236-237)

 『エピローグ__戦争が露出する』より、マルセル・モースの説の概略と、
著者の解説を引用。
 
< [注:第一次大戦の]戦後の共産主義やファシズムのルーツになっている
 のは「行動的少数派[略]」の理論です。ジョルジュ・ソレルからレーニンへ、
 そしてムッソリーニとこの行動的少数派の理論は継承され、そのコルポラティ
 スム(協同体思想)なども引き継がれたものです。ヒトラーのコルポラティスム
 は、もとはオーストリアのキリスト教的-社会的コルポラティスムだったのです
 が、ムッソリーニをまねしたので、ちがったものになってしまいました。
  そして、第二点は、こうした組織の「秘密と陰謀」という性格です。私は
 [略]ロシアの行動的少数派はよく知っています。結局、ロシア由来の共産党
 はこうした秘密セクト[略]そのもので、ですから、ファシスト党もナチ党も
 同じ機構なのです。
  「ここでは、私は、ギリシャではしょっちゅう起こったような出来事を
 簡単に見つけられます。[略]とりわけ古代社会に特徴的なもので、おそらく
 世界中どこにでもあるものです。つまり、<男たちの結社的団体(ソシエテ)>
 で、公に認められていながらも秘匿されているという同胞意識を持ち、この
 男たちの結社団体のなかでは、活動するのは青年団体なのです」[略]。
  行動的少数派の政治セクトは、「男の結社」であって、女嫌いの結社である。
 そう考えてみれば、基本的にはボリシェヴィキもファシストもナチスもみな
 女性を排除するセクトであった。それに対抗するセクトも、知らずに感化
 されて同様な性格を持たざるを得なかったともいえる。バタイユのセクトも
 また「男たちの結社的団体」にほかならなかった。ついでにいえば、バタイユ
 と対立したブルトンたちのシュルレアリスム運動もまた女性を排除する運動体
 であった。>(p246~247)

 だから、この言説をなぞるかのように、
<<スヴァーリンから奪って自分の愛人にする>という言い方>も出てくるのか。

     (桜井哲夫『「戦間期」の思想家たち レヴィ=ストロース・
     ブルトン・バタイユ』 平凡社新書 2004初 帯 J) 
 





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by byogakudo | 2016-10-05 21:39 | 読書ノート | Comments(0)


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