猫額洞の日々

byogakudo.exblog.jp
ブログトップ
2016年 10月 07日

(2)半村良『下町探偵局[PART 1]』読了

e0030187_2144891.jpg












~10月6日より続く

 かなりメッセージ性が強いとは言える。『第一話 お手伝い志願』なぞ、
ひとつの短篇の中にふたつの公害問題が持ち込まれている。ひとつは連作
短篇集の通奏低音(所長の赤ん坊は砒素ミルクを飲んで死んだ)になり、
もうひとつは第一話の伏線でもあるが、急ぎ過ぎ、詰め込み過ぎに感じる。

 とはいえ、このストレートさには、素直に頷くしかないところがあって、
[PART 1]の最終章、『第四話 街の祈り』の、貧乏人の矜持をまっすぐに
述べるシーンなぞ、やはりいい。

 貧乏人が権力者のやり口に乗っかって金儲けをするようになっちゃあ、
おしまいだというメッセージの清々しさは、誰も否定できないだろう。
 安倍晋三とか麻生太郎とか、政策をすぐに実行できるからという理由で
__翻訳すれば、早いとこエラくなれそうだからという理由で__自民党
から立候補して当選して大きな顔している丸川珠代・風情には到底、理解
できない境地であろうが。

 ただ、できれば、もうちょっと変化球的な記述であってもいいのではない
かしら? 直球でびっしり書き込まれている感じで、スペースがこの1・5倍
あれば、もっと余裕を持って書けたように思われるが、わたしはまたエラ
そうなこと言ってる...。

 新興宗教問題を持ち込まれた下町(しもまち/したまち)探偵局で、
若手の風間健一と下町(しもまち)所長とが対話する。

< 「[略]信仰の自由は言論の自由とおなじ根を持っているんですね。
 他人にその神様を信じないほうがいいと忠告はできるが、信じては
 いけないと強制はできないのか」
  「戦前はそれができたんだ。これを信じろと言われたよ」
  「天皇は神様だ、ってですか」
  「うん。そうじゃないと言えば処罰された」
  「不敬罪......」
  「それが、敗けたら天皇も人の子であるということになった」
  「現人(あらひと)神って、町の教祖さまがよく自称したがりますね」
  「それを信じるのが正しい時代だったんだなあ、あの頃は」
  下町は遠くを見る目になり、
  「信じて体当たりしていった人達がいる」>(p284~285)

 対話はこの後、さらに相対化された展開を見せる。

 [PART 1]の解説は田中小実昌。[PART 2]が都筑道夫・解説とあるが、
潮文庫以外でも解説者は同一かしら? 

     (半村良『下町探偵局[PART 1]』 潮文庫 1983年2刷 J)

10月8日に続く~





..... Ads by Excite ........
[PR]

by byogakudo | 2016-10-07 23:01 | 読書ノート | Comments(0)


<< (3)半村良『下町探偵局[PA...      (1)半村良『下町探偵局[PA... >>