2016年 10月 09日

フォルカー・クルプフル&ミハイル・コブル/岡本朋子 訳『ミルク殺人と憂鬱な夏』読了

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 写真は、大原か羽根木辺りで。


 正式な日本語タイトルは、『ミルク殺人と憂鬱な夏 中年警部
クルフティンガー』だが、作者二名をフルネームで、翻訳者名を
フルネームで、それにフルタイトルで作品名を記して原稿を送信
しようとしたら、5文字以上減らすよう通知された。
 原題は、"Milchgeld Kluftingers erster Fall"と書いてある。
ドイツ語を知らないので見当もつかない。

 2016年7月25日発行の文庫本が、近所の何もないB・Oの
108円棚にあったのは、本に読み癖のシワがあり、ページ端に
折り跡もあるからだろう。
 感じがよくて楽しく読み終わった。

 「いやあ、"文学"ってほどのものじゃなくて」と、さりげなさを
粧いたげなシーラッハより、まっすぐ淡々とエンタテインメント
路線を進む姿勢が好もしい、ともいえる。シーラッハの、スタイ
リッシュっていうのか、カッコいい巧さは認めるけれど、"愛嬌"
という感受性の問題だろうか?

 南ドイツの酪農地帯が舞台であるらしい。地理に弱いので、
これまた見当もつかない。google地図を見てみると、ヨーロッパ
って、ほんとに地続きの大陸だ。EUの概念が出てくるのも当然か。
(大陸から外れたイギリスがEUと共同歩調を取りにくいのも、当然
なのか?)

 小さな町の中年男、クルフティンガー警部が主人公の小説中でも、
通貨はユーロである。風采が上がらない警部だが、捜査の才能は
部下から尊敬の眼差しで見られている。
 のどかな町に殺人事件が起き、警部以下、東ドイツ出身の女性
秘書(サンドラ・ヘンスケ。聞いたような名前だと思ったら、バーク・
シリーズで愛聴されるジュディ・ヘンスケと同姓だった)も含めて、
全員、それぞれの仕事に集中する。

 警部の家庭問題(大したことはない)やご近所つき合いなぞも過不足
なく描かれ、警察小説であり、地方都市の風俗小説でもあり__パン屋
の日・祝日の営業が許可されたとか、ガソリンスタンドでガソリンだけで
なく、薔薇の花やCDプレイヤーや煙草も売っているとか__、コージー・
ミステリ風味でもある。どたばた描写もあるが控えめだし、気持よく読める。

 2003年に原作が出版されてから、すでに8作目まで出ているらしい。
続編の日本語訳も、出るといいな。

     (フォルカー・クルプフル&ミハイル・コブル/岡本朋子 訳
     『ミルク殺人と憂鬱な夏 中年警部クルフティンガー』 
     ハヤカワ文庫 2016初 J) 

[同日追記:
 小さな町で起きたひとつの殺人事件が、グローバル経済批判に達する
過程が描かれているとも言えるが、声高ではなく、あくまでもひっそりと、
物語の裏側に語られる。
 地域の農業を守るために、EU諸国では農産物生産に補助金を出している
ことが、きちんと述べられている。TPPなんて、お互い止めた方が身のため
なのだ。]





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by byogakudo | 2016-10-09 21:21 | 読書ノート | Comments(0)


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