猫額洞の日々

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2016年 12月 17日

(2)サイモン・ブレット/飯島宏 訳『邪魔な役者は消えていく』読了

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~12月15日より続く

 大立て者の別邸に乗り込んだチャールズ・パリスは予想通り(定石通り)、
死体を発見。その後もミステリらしく、犯人から襲われたりしながら謎を解決
するが、第一作のせいだからか、話がもたつく。あちこち寄り道しつつ物語を
進めるのは好きだけれど、寄り道と"もたつき"は違う。

 まあ、もたつきのおかげで、1973年から1974年にかけての石油危機が
ロンドンの人々にどんな影響を与えたかが解るし、そのころの安い貸室での
暮らしぶりも知ることができる。

 オイル・ショックなので車を持っていてもガソリンの確保に苦労するエピソード
が一応、謎解きに関係しているけれどエピソードをいれる手つきが、なんだか。
 
< [注:1973年の]十二月十五日で土曜日だった。クリスマスが近づいて
 いるが、英国じゅうが黒々として、あまり雰囲気(ふんいき)が盛り上がらない。
 ガスランプがわびしげに灯るさむざむとした商店には、浮かぬクリスマス買い物
 客があふれ、また万引きがここぞとばかりに戦果を競っていた。戦時中もちょうど
 こんな感じだった。>(p204)

< [注:1974年1月の]十日間がすぎた。アメリカではウォーターゲートの潮が
 押し寄せる最中、ニクソン大統領が六十一回目の誕生日を祝った。英国では
 暴風雨が全土に吹き荒れ、勤め人たちは相も変わらぬASLEFの態度に激怒
 しつつも不便を忍ばねばならなかった。主婦たちはトイレットロールのパニック
 買いに右往左往し始めた。>(p219)

 ASLEF、なんだろう? イギリスでも(日本と同じように)トイレットペーパー
不足になるという噂が主婦を走らせたのだろうが、そのころは街なかの隠遁生活を
試みていた。新聞もTVも遠ざけていたので、歴史的事実としては知っていても、
日本でのオイル・ショック余波の実感がない。

 チャールズと若い女優とが彼女の部屋で、<最新のソニーの携帯テレビ>を
見る。
<[注:TVの]番組は少なかったが、その晩は話をするよりもこのほうがまし
 だった。政府の指示どおり、十時半でテレビの放映は打ち切られた。>
(p223)

 チャールズが住むベッドシッターには、浴室と同じく、共用電話しかない。
電話がかかってくると、気づいた誰かが出る。自分への電話なら話をするし、
他人宛なら呼びに行く、いなければ「誰それから電話あり」と、メモを残す。
 チャールズのアパートメントは、彼以外はスウェーデン娘たちが住んでいる
ので、
<"ジェリー・ヴェネラルより電話あり"と、スウェーデン娘のなぐり書きがして
 あった。しばし首をひねってから彼はジェラルド・ヴェナブルズのナンバーを
 回した。>(p183)


     (サイモン・ブレット/飯島宏 訳『邪魔な役者は消えていく』
     角川文庫 1987再 J)





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by byogakudo | 2016-12-17 19:08 | 読書ノート | Comments(0)


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