猫額洞の日々

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2017年 01月 01日

(2)モリー・ハードウィック/浅羽莢子 訳『悪意の家』読了

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 新年おめでとうございます。今年もよろしくお願い申上げます。

~2016年12月31日より続く

 天候(だけ)は穏やかに始まった2017年。年越し本も無事、読了。
だが、年明け早々ミスに気づいて、慌てて過去のブログを訂正した。

 ドロシー・L・セイヤーズの感想文を読んでくださった方がいらした
ようだが、わたしは翻訳者の氏名の、名前の方を間違って書いていた。
 なんてことだ、この恩知らずの無礼者...。老眼が進んでいるとはいえ、
"莢子"を"英子"と読んでしまい、そのまま書いていたのだ。
 浅羽莢子さま、なんとも失礼いたしました。お詫びして訂正申上げます。

 昨年というか昨夜、樫の木屋敷の主をミニ・アレイスター・クロウリー
みたいと書いたけれど、本文でもその通りに言われている。正しくは、
アレイスター・クロウリーになりそこなった男が小さな村を混乱に陥れる
オカルト・ミステリでもあるコージー・ミステリだった。

 <わたしが引用するたびに
 いともやすやすとあとを続けた
 偉大なるドロシイ・L・セイヤーズの
 愛しい思い出に捧げる>
__と、献辞があり、このミステリにも"鳴鐘学"が出てくる。
 村の駐在所の警官が、その研究家であり実践者。『ナイン・テイラーズ』
ほど鐘の音が全面に鳴り響きはしないが、村に欠かせない情景として描か
れる。

 死んだ少女のために鳴らす場面が、p157からp158にかけて記述される
けれど、読んでも、『ナイン・テイラーズ』と同じように、やっぱり何の
ことだか分からない。分からなくても、黒魔術愛好者の樫の木屋敷の主に、
村の牧師でヒロインの恋人が"神罰宣言"を行って対抗したりする、オカルト
風味たっぷりのミステリとして楽しめるし、ヒロインが骨董商なので、
ときどき骨董品への愛(オブジェ愛!)が語られるシーンが、とても好きだ。

 オブジェ愛で思いだした。渡辺紳一郎『紳一郎捕物帳 その他』の『語学
蒐集癖』に、

<先祖代々儒者の家に生れて損した、物を集めるなどということは
 「玩物喪志」といって、士のやるべきことではないというのが、
 私の父の考えであった。>(四季新書 p92)
__「玩物喪志」という言葉は、もちろん澁澤龍彦のエッセイで覚えた。
"玩物"=オブジェ愛とだけ反応していたので、次の"喪志"の意味など
考えたこともなかった。

 『悪意の家』『訳者あとがき』によれば、骨董屋、ドーラン・フェア
ウェザーをヒロインとするシリーズはこれが第一作で、1992年時点で
6作書かれているそうだ。

< このシリーズにはさらに三つの特徴がある。一つは骨董で、主人公が
 骨董屋という、本書では背景の一部に過ぎなかったこの事実も、第二作
 以降はそれこそ必要不可欠な要素となってくる。本場イギリスでのアン
 ティークの位置もわかって興味深い。>(p323)
 
 残り5冊も日本語にならないだろうか。ヒロインは職業上のみならず、
根っからの骨董好きで、自分の個人的なコレクションである古い扇を
取り出して、居間にひろげて昔を思うシーン(p199-200)や、銀器を
磨いて気を落ち着かせる場面__

<本来のやわらかい輝きを取り戻したきれいなジョージ王朝のスプーンが、
 眼くばせするようにきらりと光った。感謝しているのかもしれない。
 無生物は裏切らない。ドーランはスプーンに語りかけ、丸く窪んだ
 部分に映った自分の顔が伸び縮みするのを見守った。>(p273)

__こういう箇所を、わたしはもっと読みたい。どこか、出してください。


     (モリー・ハードウィック/浅羽莢子 訳『悪意の家』
     現代教養文庫 1992初 J)





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by byogakudo | 2017-01-01 22:26 | 読書ノート | Comments(0)


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