猫額洞の日々

byogakudo.exblog.jp
ブログトップ
2017年 01月 13日

今週のホイホイ(11)『戦争がつくる女性像』+『自発的隷従論』に追加

e0030187_2173074.jpg












~1月7日より続く

 若桑みどり『戦争がつくる女性像』の付属年表によれば、

<昭和13年(1938)
 1月1日 母子保護法施行
 1月11日 戦争拡大で国民の体位向上・人口政策のため
      厚生省設置。>(p274)と、ある。

 戦争には人手が必要だ。とりわけ若くて体力のある男が。
女は持久力はあるけれど、腕力や瞬発力は、一般的に男より
劣るし、若い女は月経があるから、その度に交替要員がいる
ので、前線で戦う兵隊にはあまり都合がよくない。 
 だから堕胎を犯罪と見なす法律をつくり、避妊は非国民的と
される。

<産婆の登録や、「母の日」の制定は、[略]
 国家が母性を管理または、賞賛すること(賞賛も管理の一形態
 である)をはじめたことの明らかな証明であり、母性の重視は、
 人口政策と国家的家族管理の要、国民精神の(同じ母のもとに
 おける)統合、そして最後には、母でない女、近代的で、エゴ
 イストで、非国民的な女に対する潜在的攻撃がそこに秘められて
 いた[略]>

 いまもある「母の日」は、ドイツ起源だ。出産に出血がつきもの
のように、血の臭いのする過去を持つ。

<これは1927年にドイツの花屋団体がはじめたものである。これは
 日常生活の中に母親崇拝を植え付けることに大いに貢献したので、
 ナショナリストが熱心に推進し、母親援助綱領、子供の多い母親の
 表彰、公的な場での母親礼讃などとともに、国家での優勢学的、
 人口政策論議に機会を提供してきた。
  1933年(昭和8)ヒトラーが政権をとってからは、彼の母親の
 誕生日(8月20日)に変わった。政権を獲得した年のドイツの母の
 日には、ヒトラーが子供8人以上の母親に金、6人は銀、4人は銅
 という「母親勲章」を授与している。ヒトラー・ユーゲントは、
 勲章をつけている母親に出会ったときには「ハイル・ヒトラー」
 ということになっていた。>

 第一次世界大戦の後なので、若い男たちの数が少ないのは、第二次
大戦の同盟国側でも連合国側でも同じだった。
 フランスでは1920年に中絶禁止法、同年5月26日に、
<5人以上の子供を持つ母に勲章を授けた。>
 イタリアでは1930年代にムッソリーニの「出生率への戦争」宣言。

<多くの国では、出生率低下に対抗する政策は受胎調節や中絶を厳禁
 する法律の制定と優生学の奨励だったが、これとともに母性復興
 プロパガンダを社会に対しておこなうことが重視された。>

(p070-072『第一章 日本の戦時体制と女性の役割』『戦時下の母性政策』)

 生めよ殖やせよ政策を考えるのは男たちだからだろうか、見積もりが甘い。
 ヒトの赤ん坊が誕生するまでに10ヶ月かかる。兵士として訓練して使い物に
するには、少なく見積もっても10歳以上の年齢であることが必要だろう。
 戦争を始める少なくとも15年前から母体としての女性管理を開始していな
ければ、無理で無駄な政策なのに、同盟国側も連合国側も、泥縄式だ。
 しょうことなしに(論理の延長としても)、イスラム国みたように、少年兵・
幼年兵を使用したり、日本軍の特攻のように、肉体を爆弾の一部と成す作戦も
出てくるか。

 21世紀になっても事態は変わらない。時間だけが経つ。
 アメリカ軍兵士の命の値段は高い。死亡すると遺族への補償にお金がかかる
し、厭戦気分が蔓延して、ヴェトナム戦争のときのように反政府運動が盛んに
なると、政権が保たなくなる。アメリカのどんな政権も軍事産業に支えられて
きたので、一政権・一戦争は、いわばノルマなのに。
 だから無人兵器を開発して、できるだけアメリカ人兵士の死者を減らす。
経年劣化する兵器のバーゲンでもある戦争を、どこかで行う。

~1月11日より再度、引用する。

<結局のところ、圧政から利益を得ているであろう者が、自由を心地よく
 感じる者と、ほとんど同じ数だけ存在するようになる。>
(p067-068『自発的隷従論』)


     (若桑みどり『戦争がつくる女性像』 ちくま学芸文庫 2000初 帯 J)
     (エティエンヌ・ド・ラ・ボエシ/西谷修 監修・山上浩嗣 訳
     『自発的隷従論』 ちくま学芸文庫 2015年5刷 J)





..... Ads by Excite ........
[PR]

by byogakudo | 2017-01-13 21:33 | 読書ノート | Comments(0)


<< (2)鳥飼否宇『昆虫探偵 シロ...      (1)鳥飼否宇『昆虫探偵 シロ... >>