猫額洞の日々

byogakudo.exblog.jp
ブログトップ
2017年 01月 15日

(1)ローレンス・オリオール/荒川比呂志 訳『やとわれインターン』もう少し

e0030187_10355998.jpg












 連日寒い。夜、寝床で本を読むときはフリース・ジャンパーを後ろ前
に着て腕と肩を保護しているが、それでも肩が冷える。
 この寒さ対策は母が教えてくれたのだけれど、彼女はどうやって思い
ついたのだろう、何かで読んだのかしら? 母の行年をはるかに越えた
娘が、まだこのスタイルを続けている。

 フランス・ミステリは、賭けだ。合わないと、ほんとに合わない。
これは、大丈夫そう。

 ふと、翻訳者名で検索してみたら、フレッド・カサック『殺人交差点』
ブリス・ペルマン『顔のない告発者』も、荒川比呂志 訳で読んでるじゃないか!
 日本語しか読めないのに、ずうっと翻訳者名を記さずに感想文を書いてきた
恩知らずぶりに、やっと気づいたのが、ごく近年だ。わたしに楽しい時間を
与えてくださった翻訳者の方々、改めて、長年の非礼をお詫び申上げます。

 まず殺人事件の現場検証シーンから始まる。殺害方法はそこで分るけれど、
誰の死体なのか書かれていない。

 次いで、殺人に到るまでの関係者の過去が語られる。

 大学病院の傲慢で腕のいい外科医(50歳)は出自はそれほど良くないが、
ブルジョア女性(38歳)と結婚して、いまは上流階級だ。彼には32歳の愛人
がいる。彼女は二号ではなく正妻の座を狙っているので、彼を焦らした挙句
とうとう、個人的な秘書に雇わせ、彼の自宅に出入りするようになった。

 町医者ではなく大学病院の医師になりたいと願う医学生(25歳)は、女なら
誰でも振り向くような美青年。私生児として育ち、母も亡くし、安い給料で
苦学しているが、なかなかインターン試験に合格できない。

 外科医は美青年と、どうもウマが合わない。お互い、顔を合わせると苛立つ
のだが、ある日、美青年に提案する。うちに住んで衣食住の心配なく、大学
病院・インターンの受験勉強に専念したらどうか、と。
 妻が彼の美貌にイカれて浮気して、その証拠を掴めたら、カトリックであっても
離婚に持って行ける。そうしたら妊娠している愛人と再婚できる、という希望的
観測に則ったプランなのである。原作刊行は1966年。離婚も堕胎も、ひどく
困難な時代だ。

 美青年は外科医の、これまでとは手のひらを返すような提案に驚くが、
貧しい生活__
<夕食はわずかばかりのパンとチョコレート入り牛乳一杯で生きてきた。
 [略]
 満足するほど食べることがいいことだとは思っていなかったし、食事は
 軽いほうが勉強はよくできると思っていたのである、>(p25上段)
__から脱出できるチャンスに、思いきって賭けてみる。

 というわけで、ひとつのアパルトマンに、夫と妻と、夫の愛人と妻の愛人・
候補の4人が暮らす(に等しい)ドラマが始まる。あらすじを書き出してみると、
フランス・ミステリらしい(?!)無茶な設定には違いないけれど、それぞれの
心理や思惑の描写が巧いので、わりと自然に読み進められる。


     (ローレンス・オリオール/荒川比呂志 訳『やとわれインターン』
     HPB 1969初)

1月16日に続く~





..... Ads by Excite ........
[PR]

by byogakudo | 2017-01-15 16:16 | 読書ノート | Comments(0)


<< (2)ローレンス・オリオール/...      (2)鳥飼否宇『昆虫探偵 シロ... >>