猫額洞の日々

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2017年 01月 28日

(2)鮎川哲也『サムソンの犯罪』再読・読了

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 楽しく読み終わった後で、もしかしてと検索・確認してみたらば、
2010年5月29日に、既に読んでいるじゃないか。

 引用しようと思った箇所も似たり寄ったり、アシモフ『黒後家
蜘蛛の会』を思い出すこともおんなじ、そして、しっかり/すっかり
忘れきっていた。
 我ながら凄いなあ。

 今回の付箋は、以下のページに挟んでいた。

<人殺しのあった家はいやだといって家政婦がいきたがらぬもの
 だから、それに代わって学生アルバイト斡旋協同組合連合会東京
 事務局城南支部より派遣されたのだそうだ。>
(p40『中国屏風』)

< 駅の西口の改札口をぬけると、商店街をとおって淀橋の浄水場へ
 むかった。[略]
  二、三年前に廃止された浄水場の更地に、あたらしくビルや高層
 ホテルが建ったものの、場所によっては空地として放置されたところが
 ある。桐山吾平の小さな住居は、この空地に、三方をかこまれて孤立
 した形で建っていた。>(p79『割れた電球』)

__この風景描写を読んだときに、やや既視感を覚えたが、それ以上
なにも思い出さず、疑念も抱かず読み進んだのだ。この短篇集では、
訪ねて行った先のドアは大抵、ロックされてない。訪問者は試しにノブ
を握ってみて、死体に遭遇する。

< 三田尻は日劇のそばの階段から地下におりると、地下鉄銀座駅で
 荻窪ゆきの電車に乗り、中野坂上で乗りかえて終点の方南町で下車
 した。そして後も見ずに地上にでて、すぐ鼻の先のマンションに入った。>
(p144『菊香る』)

< 編集者の鈴木千吉は池上線の池上駅で下車すると、くず餅屋がならぶ
 商店街をぬけて、本門寺(ほんもんじ)のほうへ向かって少し急ぎ足で歩いて
 行った。>(p185『屍衣を着たドンホァン』)

__池上線・全沿線踏破、やってない。

< 「[略]この大時計というのはグランドファーザーズ・クロックと称する
 大型の振り子式時計で、[略]。
 柱にぶるさげるんじゃなくて、壁をバックに、床の上に立てておくんだ」
  ことわっておくけれど、ぶるさげるとはぶらさげるの謂(いい)である。
 この法律家は東京生まれの下町育ちだから、ときどき妙な日本語を
 つかう。>(p191『屍衣を着たドンホァン』)

< 小村のマンションは渋谷区代官山のはずれにある。七階建てのお伽噺に
 でてくるような屋根のとがった建物で、彼の部屋は一階のいちばん奥まった
 一画であった。窓をあけると、目の下を山手線がとおっている。>
(p242『走れ俊平』)

__(部屋にはもちろん死体があるのだが)訪問者は、このドアの錠が下りて
いるかどうか試さない、珍しいケース。

 『黒後家蜘蛛の会』ではレストランで会食しながら謎が提出され、会員たちが
それぞれの解釈を述べ、最後に神のごときウェイターにより、正解が語られる
パターンだ。
 『サムソンの犯罪』では、そこまでの形式化はされず、名探偵・バーテンダー
の推理が、いつも最後に来るとは限らない。

 前者はレストランが舞台であり、メンバーも生活には困らない層。犯罪とも
いえない"謎"が多いので、読後感は和やか・穏やかだ。
 後者は、殺されるのはプチブル層、犯人視されるのは、あまり豊かではない
人々(が多い)、調査に当るのが貧乏・私立探偵というパターン(だが、いっこう
に暗くない)なので、読後感がかなり違うことに今回、気がつく。

 前作『太鼓叩きはなぜ笑う』も読もうかしら。わたしが推理しなくても名探偵
が説明してくれるし、何より湿気がなくて楽しい。

 
     (鮎川哲也『サムソンの犯罪』 創元推理文庫 2003初 J)



呪 吐爛腐/呪 心臓亜屁/





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by byogakudo | 2017-01-28 22:16 | 読書ノート | Comments(0)


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