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猫額洞の日々

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2017年 02月 16日

(3)ロバート・A・ハインライン/福島正実 他・訳『地球の脅威』読

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~2月15日より続く

 ハインラインは職業軍人出身だから、新自由主義的な共和党・
右派なのだろうと思っていたが、いまwikiを見てみたら、始まりは
民主党・左派。添い遂げた、三番目の奥さんと結婚してから右旋回
したようだ。ナンシーと結婚後、右翼になったレーガンと似ている。

 転向者は、改宗後の身ぶりが大きくなる。大きな表現をすることで、
悔い改めた意志がより鮮明に表明されると感じる。大きく上書きして
過去を塗り込めたいと願う。
 個人的な過去の修正・塗替えは、いつか自分が関わった時間への
修正願望に変わる。歴史修正主義への道が目の前に広がる。てのが
パターンだけど、ハインラインの場合、軍人としての自己規定・自立性、
そこに発する自己責任性の問題なのかしら、右・左以前に? 
 いまさら右翼も左翼もないといわれそうな風潮だが、それでも右は右
であり、左は左だ。

 責任感から月へ血清を運ぶ任務を遂行して戻って来たら、重力の
負荷のせいで、すっかり老衰してしまった若い軍人(『血清空輸作戦』
__これには元の持主はチェック点をつけてない)、ナイアガラの滝を
樽に入って下るに等しい暴挙であっても、未知の領域を調べるために
試みる技術者たち(『金魚鉢』)、ソ連の仕掛けた原爆を、念力を使って
発見しようとする超能力者たち(『夢魔計画』)、出来は感心しなかったが
『コロンブスは馬鹿だ』も含めて、ハインラインの一大テーマ、崇高な目的
への自己犠牲的献身が描かれる。
 大多数の人々の利益のために、ひとりの或いは少数の選ばれた能力をもつ
人間(エリート)が、その身を犠牲にして尽くす。ノーブレス・オブリージュ
の極みである、すばらしい...と言い切れないなあ。ナルシシズム抜きでそれを
やるのなら、まあ認められるのだが、書き手は読者をヒロイズムに酔わせて
納得させようとする。

 彼らの自己犠牲は、送り出す側の上級軍人たちによって慮られ、ねぎらわれる。
命令を出す側は、思いやりと同士愛みたようなものは豊富だけれど、決して自分
じゃ行かない。彼らまで行ってしまうと、無責任な大衆である読者に、尊い犠牲
が払われていることを告げる装置がなくなるから。
 上級軍人たちは作家を代弁する。命令者だって辛いのだと、作者から気づかい
されながら。
 なんかな。現実(と呼ばれるもの)とフィクションの構造とが、呼応し過ぎてる。


     (ロバート・A・ハインライン/福島正実 他・訳『地球の脅威』
     HPB 1965初)



呪 吐爛腐/呪 心臓亜屁/呪 共謀罪=ネオ治安維持法/





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by byogakudo | 2017-02-16 20:31 | 読書ノート | Comments(0)


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