猫額洞の日々

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2017年 03月 29日

(2)アルフレッド・ベスター/中田耕治 訳『虎よ、虎よ!』読了

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~3月27日より続く

 "ジョウント"と呼ばれる能力によって就ける仕事に差異が
生ずる時代設定だ。行きたい場所を思い描くことで実際に行き
つける能力"ジョウント"の距離で等級分けされる。最低が8km、
最高が1600km。ジョウントできなければ最下層に甘んずる
しかない。

 主人公、ガリヴァー(ガリー)・フォイルの履歴は、筋骨
たくましく身体剛健なれどジョウント能力ゼロ。最低辺の
プロレタリアートだ。
 壊れた宇宙船の、ただひとりの生き残りで、棺のようなロッカー
をねぐらとして、宇宙空間を漂うこと170日。やっと近くを宇宙船
が通った。救難信号を発したのに、無視される。

 怒りと復讐心が彼を覚醒させた。無知で無気力だった男が、
自分の頭を使って壊れた宇宙船を動かし、地球に戻ろうとする。
その途中で、宇宙の塵捨て場みたいなサルガッソ小惑星に拾われ、
顔中に虎様の刺青を施される。

 怒りと復讐心は眠っていたエネルギーを解放する。ガリー・フォイルは
超ジョウント能力を発揮する。1600kmどころか、宇宙空間を瞬時に
ジャンプ、地球に生還した。
 復讐の鬼と化したガリーは、金をつくり、顔の刺青を消し、宇宙船の
持主などの集まる上流社会に新人・成金デビューする。
 そのパーティ場面で、はたと気づいた。これって『がんくつ王』!
子ども用にリライトされた『がんくつ王』しか知らず、涙香の『巌窟王』
も「モンテ・クリスト伯』も読んでいないが。

 あとはもう、目覚めよ、人類!とばかりに、次から次へと事件を起こして
遂に"太陽系の敵ナンバー・ワン"になっちゃうガリー・フォイル。めくる
めくストーリー・テリングだが、アルフレッド・ベスターは、恋愛場面が
向かない。
 パーティで仇の娘(彼と似た、悪への意志をもつ娘)と知り合い、恋に
落ちるが、そう書かれているだけで、ちっとも伝わってこない。物語を
動かすダイナモにならない。三島由紀夫『黒蜥蜴』なら、二人で悪の
アリアを詠うべきシーンなんだけどな。みごとに使い捨てのエピソード
として、後を引かない。

 そんなささやかな弱点(?)なぞ、ものともせず、バロックな歪みと
輝きをきらめかせて『虎よ、虎よ!』は急速に終息・終結する。
 大傑作だった。

     (アルフレッド・ベスター/中田耕治 訳『虎よ、虎よ!』
     ハヤカワ文庫 2008初 J)



呪 吐爛腐/呪 亜屁沈臓/呪 共謀罪=ネオ治安維持法/





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by byogakudo | 2017-03-29 21:44 | 読書ノート | Comments(0)


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