猫額洞の日々

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2017年 04月 14日

久生十蘭『久生十蘭ジュラネスク 珠玉傑作集』読了

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 久生十蘭は男っぽい作家だ。男の中の男って感じもする。
男っぽさの中でも特に男っぽい作品を集めた、印象の短篇集だ。
 怪談であれ、我慢比べというか痩せ我慢比べの物語であれ、
主人公たちも記述の調子も、タフでクールだ。

 『生霊』では、絵描きが山奥にスケッチに行く。村人から去年、
戦死した男(彼も絵描き)にそっくり、生き写しだと言われる。
山村では、最初のお盆に迎え火を跨いで家に入ってくる者が新仏
(にいぼとけ)とされている。
 家に残された老人たちのために、新仏役を演じてくれないかと、
戦死者の妹(彼女も絵描き)から頼まれる。
 その前段階で、妹と絵描きとが、互いに相手を狐が化けている
のではないかと疑い合う、コミカルなシーンが続く。のどかな山村
風景と見るには、なんだか、ちぐはぐな会話のトーンである。
 絵描きは成り行きに従って(逆らわない!)、引き受ける。
 形だけ、死者を演じているつもりでいたが、ペルソナは身体に浸潤
する。演じているうちに、死に際の死者の記憶さえ、我がものに感じる
のである。ペルソナの物語であろうか。
 また、マレビトである絵描きの男(生者)、山に暮らす絵描きの女
(生者)、女の兄である絵描きの男(異郷で死んだ)の三人が、時空を
超えてメビウスの環に似た三角形を描く話とも思える。

 "男っぽい"というなら、『南部の鼻曲り』や漂流譚の『藤九郎の島』、
『美国横断鉄路』辺りを取り上げるべきだったかしら。つい、怪談に
引っかかってしまう。ほんとにかっこいいなあ。


     (久生十蘭『久生十蘭ジュラネスク 珠玉傑作集』
     河出文庫 2010初 J)



呪 吐爛腐/呪 心臓亜屁/呪 共謀罪=ネオ治安維持法/





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by byogakudo | 2017-04-14 21:50 | 読書ノート | Comments(0)


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