猫額洞の日々

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2017年 05月 08日

ジョン・ル・カレ/宇野利泰 訳『寒い国から帰ってきたスパイ』ほぼ読了

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 リチャード・バートンに興味がないので映画を見ていない。だから
スパイものとは知っていても、ストーリーの情報がない。"寒い国"
というのは、てっきりソヴィエト・ロシアのこと(!)と思ってきた。
 原題"The Spy Who Came in from the Cold"を知って、初めて
ソ連とは関係ない話なのに気がつく。

< 「無理を承知で、いますこし、寒い場所からはなれずにいてほしい
 のさ」>(p27)
と、ボスに言われてスパイ活動の最前線に立つ中年男、リーマスの物語
だった。

 リーマスは、イギリスが東ドイツに張り巡らしていたスパイ組織の責任者。
スパイ網が破られたことでクビになり、ヤケを起こしてアル中気味。遂には
障害沙汰で刑務所入りする。
 そこまでやって準備したかいがあって、東ドイツのスパイ組織からスカウト
される。そこで、西側からの転向者として東ドイツに潜入し、東側のスパイ
組織を壊滅させようとする...。

< 相手のない、自己単独の行動に生きるものは、つねに精神上の危機に
 さらされている。他人をあざむく行動自体は、かならずしもつらい仕事
 とはいえない。要するに経験の問題であり、[略]そして、たとえば詐欺師、
 俳優、賭博者たちは、ときにその演技をはなれて、観客の列にもぐりこむ
 こともできる。だが、秘密諜報部員だけは、そのような救いに心をやすら
 げるわけにいかない。かれにとって、相手を欺くことは、なによりさきに、
 自己防衛の問題なのだ。敵は外部にいるだけでなく、おのれ自身の心が
 相手で、まずもって、これと闘わなければならない。いつ、おそうかも
 知れぬ衝動から、身を守ることが大事なのだ。
 [略]
  リーマスもそれを知っていた。孤立して、日夜、謀略に従事している身を
 おそう誘惑のはげしさ。それを意識して、かれは最善の防護策をこうじた。
 ひとりでいるときも、仮装人物の姿勢をくずさぬことがそれで、第二、第三
 の人物として生きることを、おのれ自身に強いるのだった。
 [略]
 創造の力を棄てることなく、創造した人物に、かれ自身を同化させようと
 する。[略]不安と動揺、不面目をかくすためのことさらな傲慢さ。それは
 かれ本来の性格の近似というより延長だった。[略]ひとりになったときも、
 その習慣を忠実に守った。いや、むしろそれをいっそうきわ立たせたほどで、
 かれへの諜報部の不当な処置に不平をこぼしつづけるのだった。
  今夜は、特別それがはげしかった。きわめてめずらしいことだが、ベッドに
 はいったあとまで、大きな虚偽に身をまかせるという、危険な境地にあえて
 溺れていった。>(p191-192)

 ドストエフスキーがミステリ、ことにスパイ小説やノアールに与えた影響って
大きいだろうなと、ろくにドストエフスキーを読んでなくてヤマカンでそう思う。

 あっ、そうだ。
<リーマスはあいかわらず、心のなごやぎを知らぬ男のように、ふきげんな
 顔つきを見せていた。>(p82)
 "なごやぎ"?



     (ジョン・ル・カレ/宇野利泰 訳『寒い国から帰ってきたスパイ』
     ハヤカワ文庫 1992年21刷 J)



呪 吐爛腐/呪 亜屁沈臓/呪 共謀罪=ネオ治安維持法/

<逢坂「捜査しなければ告発の嫌疑があるかどうか分からない」
 金田「嫌疑がなければ捜査の必要性がない」
 逢坂「嫌疑がないことはどうやってわかる?調べないでわかるのか」
 金田「告発の内容を慎重に検討して嫌疑がなければ捜査しない」
 逢坂「告発されたら調べなければ嫌疑の有無わからないでしょ>
(キャオ@大阪トホホ団亡者戯 19:53 - 2017年5月7日)





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by byogakudo | 2017-05-08 20:33 | 読書ノート | Comments(0)


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