2017年 07月 15日
写真は近所の猫さんたち。フレーム外だが、右側にもう一匹、 キジトラがいた。時分時なので、わたしたちからエサが貰えるか と近づいてくるが、持ってない。ごめんなさい。 ~7月14日より続く 地に足がつかないのが男だ。そういう男の属性を表象するために、 彼の職業をパイロットにしよう。(女は否応なく地に足がつく。彼女を 移動させるには、歩行以外に何がいいかとヒッチコックは考えて、車を 運転させるのだろうか? 助手席に男を乗せれば、"家庭"のメタファー にもなる。) 『天国の登り口』、主人公はもうすぐ40歳になろうという老兵、川島 整曹長。 <十六歳で海兵団に志願した。[略]すぐ航空廠に入れられ、 [略] 実施部隊に配属された。二十二年間も海軍にいると、もう苔のついた 立派な職業で、これ以外の生活は考えることもできない。>(p212-213) 軍隊の規律、つねに上官からの命令を受けての行動。それが彼に とっての日常だ。 物語はマイコールの前進基地に落下傘降下で行くよう、命令された 主人公がためらいながら降下するシーンから始まる。 <肥りかけて身体が重くなり、こういう運動には適さない状態になって いる。落下傘で飛びおりるのは今日が最初だ。>(p204) しかし、やっとのことで降りた基地は無人である。機関砲や機銃は砲座 だけ残り、だが工作機具や材料はそのままだ。米や缶詰もたっぷり備蓄 されているが、入江に置かれた飛行機は壊れていて使い物にならない。 <どこにも銃痕や焼けたところがない。翼のよじれや、クラッチの歪みや、 変形した弁の壊れかたなどを観察すると、ハンマーか何かで潰したの ではないかと思われるようなふしがあった。>(p209) まるで漂流譚、いや、冒頭の落下傘降下に記された通り、彼は軍隊という 日常/楽園から追放されたのである。 けれども軍隊を疑う頭を持たない彼は、撤収なら、なぜ食糧や燃料がある のか、きっと次便で別の部隊がやってくるだろうと、合理化して待機する。 ひと月経つ。基地は廃墟化が進行する。南洋の海辺の見捨てられた基地は 植物に覆い尽くされそうになる。読んでいると、どうしてもJ・G・バラード を思い出す、文体はちがっても。 < 浜菅(はますげ)のような剛(つよ)いランラン草が陣地のあとに入りこみ、 一と月のうちに銃座を埋めつくしてしまった。アビトンの林の奥の医務室は、 ロダンゴの蔓にからみつかれ、あっけなく倒壊した。兵員室の前の泥地には マングローブが四方から進出してきて、わずかの間に半分ほどの広さになった。 二年も経ったら、この基地はむかしの原生林のすがたにかえってしまうのだろう。 主計倉庫のなかで、米はすごい勢いで芽をだし、鑵詰の鑵がふくれて、毎日の ように破裂している。>(p215) いよいよ、ひとりで見捨てられたまま死ぬ可能性を自覚したころ、夢に 妻の声を聴く。彼は技術があり、道具や材料もあるのだから、廃材から 飛行機を作ればいいのに、と。 さらにひと月経ったころ、インドネシアの漁船が島にやってきた。指揮を 執る若い隊長の顔に見覚えがある。 < 「整備で使っていたセガルのようだが」と思いながら見ていた。> (p218) 徴用していたセガルは、じつはアンボイナの侯王(スフナン)だと名乗り、 川島整曹長はようやく、もう自分の戦争がないことを知る。軍隊組織以外 の日常を持たない彼は、インドネシア独立運動に参加すること、新しい上官 としてセガルに仕えることを選ぶ。 <せいぜいパイロットぐらいのところで追い使われるのだろうが、戦争にさえ くっついていれば、食いはぐれることはまずないのだ。>(p225) 飛行機を整備し、後部座席に上官・セガルを乗せ、主人公はふたたび楽園/ 日常を目指すが、失墜、追放されて物語が終る。 男と飛行機が出てくる短篇、『大竜巻』『天国の登り口』『雲の小径』は、 男たちが冥界に誘われる物語だ。男らしい、久生十蘭らしい、男の世界。 (久生十蘭『十蘭万華鏡』 河出文庫 2011初 J) 呪 亜屁沈臓/呪 共謀罪=ネオ治安維持法/呪 吐爛腐/ 東京新聞・望月衣塑子記者が語る、安倍政権の裏側――記者がスパイのように…… 「共謀罪」法施行 警察監視の独立機関が必要 法律家ら提言 共謀罪強行成立記念! 安倍政権の暴挙を忘れないために振り返る 「共謀罪トンデモ答弁・暴言録」 【票を入れるな危険】日本会議所属の都議候補一覧 小池百合子氏 日本会議“本流”から外れた愛国者 「共謀罪」法 衆参両院議員の投票行動 上記のPDF
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by byogakudo
| 2017-07-15 14:57
| 読書ノート
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