2017年 07月 26日
~7月25日より続く 明治末から昭和初年にかけて書かれた随筆が収録されて いるが、岡本綺堂の社会的弱者("弱者"って厭な言葉だが、 差し当たって置き換えるべき名詞を思いつかない)に対する 姿勢は一貫している。 その当時の世間からは低く見られる人々に対して、注意深く 共感的なまなざしを注ぐ。 初出不明の『葉桜まで』は、上州の温泉宿の女中たちについて 詳しく書かれる。 脚気持ちのお鶴さんは、自分の嫁入り衣装代を稼ぐために、 初めての職場にやってきたが、脚気が悪化して実家に戻って 養生することになる。 長年、宿に勤めているお秋さんは、 <無暗にげらげら笑うのが彼女の癖で、>(p193) 悪気はないとわかっていても、ときどき相手にするのに疲れるが、 何の苦労もなさそうに見える彼女は、じつは夏に療治に来ていた 医学生がまた訪れてくれるのを待ち続けている。 気の荒いお国さんは、朋輩との折り合いが悪いことに加えて、 湯治客のお金を盗んだ疑いがかかり、辞める破目になる。 家が貧乏なので、実の母から、女中でなければ、だるま屋で 稼げと言われている。 実家に戻ってから料理屋(?)勤めをしたが、堪えられず温泉宿 に舞い戻り、また雇ってくれと頼む。無断で料理屋(か達磨屋)を 飛び出してきたので、いずれ連れ戻されるだろう。 警官と結婚しているお仲さんは、出張中の夫に黙って奉公したが、 すぐに夫に連れ戻された。 桜が咲き、散って葉桜になるまでの逗留期間に出会った4人の女中の 話が、綴られる。 湯治客向けの質素な宿の、美人ではない女中たちの動向を、こんなに 丁寧に観察する作家も珍しいのではないかしら。 大正2年(1913年)初出の『仙台五色筆』では、紅連尼(こうれんに) の物語について語る。 親同士が結婚を決めたが、夫になるべき息子が急死してしまう。娘の ほうは何も知らずに象潟から嫁いでくる。 <わが子の果敢(はか)なくなったことを語って、娘を象潟へ送り還そうと したが、娘はどうしても肯(き)かなかった。たとい夫たるべき人に一度も 対面したことも無く、又その人が已にこの世にあらずとも、一旦親と親と が約束したからには、妾(わたし)はこの家の嫁である。 [略] 私はこんな話を聞くと、戦栗(みぶるい)するほどに怖しく感じられて ならない。私は決してこの娘を非難しようとは思わない。寧ろ世間の 人並に健気な娘だと褒めてやりたい。而もこの可憐な娘を駆って所謂 「健気な娘」たらしめた、その時代の教えというものが怖しい。 子を亡った掃部夫婦も矢はりその時代の人であった。究意(つまり)は その願に任せて、夫の無い嫁を我家に止めて置いたが、これに婿を迎える という考慮(かんがえ)もなかったらしい。>(p143) __そうして夫婦の死後、嫁に来た娘は尼になった。 船旅で知ったイギリス人の老婦人にも、綺堂は同情する。彼女は実家が 破産してインド人男性と結婚したので、同階級の人々から相手にされない。 (p187 初出不明『秋』) 昭和7年(1932年)から8年(1933年)初出の『苦力と支那兵』では、 <苦力といえば、最も下等な人間で、横着で、狡猾で、吝嗇(りんしょく)で、 不潔で、殆(ほとん)ど始末の付かない者のように認められているらしいが、 必ずしもそんな人間ばかりで無いと云うことを、私の実験によって語りたい と思うのである。>(p176) 社会的地位が低い人間に対するこのような細やかな見方は、どこに由来 するのだろう。ところを得られないと分かっている旧幕臣系の男たちが皆、 こんな感受性とは思えない。 (岡本綺堂『綺堂随筆 江戸っ子の身の上』 河出文庫 2003初 J) <【生命維持装置】 「株価高くて気持ちいい」から「株価下がれば内閣崩壊」となったアベの ため、クロダ日銀は2日続けて707億円のETF買い。14兆円をこえ、 もう続かないという日銀内、東証内の悲鳴も無視だ。このツケを一体誰に 払わせるのか。https://goo.gl/HTpgGa > (20:40 - 2017年7月25日) 呪 亜屁沈臓/呪 共謀罪=ネオ治安維持法/呪 吐爛腐/ 「共謀罪」法施行 警察監視の独立機関が必要 法律家ら提言 共謀罪強行成立記念! 安倍政権の暴挙を忘れないために振り返る 「共謀罪トンデモ答弁・暴言録」 【票を入れるな危険】日本会議所属の都議候補一覧 小池百合子氏 日本会議“本流”から外れた愛国者 「共謀罪」法 衆参両院議員の投票行動 上記のPDF
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by byogakudo
| 2017-07-26 16:56
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