2017年 08月 11日
写真は昨日の梨園染 戸田屋商店・店頭。東の東京、 すてき。 小説は読みかけて、たしか放ってしまったようだが、 エッセイやインタヴューを収めたこの本は読み終えた。 なんだ、気が合うじゃない。 ヒトは言葉を獲得したことで、本能に支配される閉鎖系 プログラムを解放する。「群れ」は一旦、分散するが、 <「群れ」全体として、環境に対する適応力を増して [略] やがては直接顔を合わせることのない成員を組織する までに巨大化し、抽象化され......ついには国家の誕生> <集団内における「儀式の運用」と「戦闘力」というこの 二極分化は、昔も今もほとんど変っていない [略] <ことば>の技術者であるシャーマンと、戦士の統率者 である族長がかならず併立して、権力の楕円(だえん) 構造をつくってしまう。 [略] この楕円構造はヨーロッパではカソリック社会における 王と法王の関係[略]、 日本でも永いあいだ将軍と天皇の併存がつづいて> (p25-26『I シャーマンは祖国を歌う 儀式・言語・国家、 そしてDNA』) 『II 右脳閉塞(へいそく)症候群』では、 < 角田忠信氏の『日本人の脳』という本によれば、 母音だけで意味を形成する日本語の特殊性のせいで、 日本人は自然音によって優位脳(一般には左脳)を刺戟 されやすく、そのぶん劣意脳(右脳)の閉塞をおこし やすいという。 [略] たしかに右脳が閉塞した感性の障害者がその辺をまかり 通っている。[略] もっと悪いのは、感性(右脳)の欠如を補うために、 情緒過多症におちいってしまった連中かもしれない。 情緒は一見したところ感性と近縁にある精神活動のよう だが、じつはおおよそ似て非なるもので、むしろ言語周辺 領域に属する「あいまいな言語」と考えるべきだろう。[略] まがいものの言語のくせに、なんとなく感覚的な、その まぎらわしさがよけいに危険なのだ。ただでさえ右脳閉塞 におちいりやすい日本人の心的構造を、抵抗なく武装解除 してしまう。>(p42) 『II サクラは異端審問官の紋章』からは、 < ぼくは桜の花が嫌(きら)いだ。闇(やみ)にたなびく雲の ような夜桜のトンネルをくぐったりするとき、美しいとは 思う。美しくても嫌いなのだ。日本人の心のなかに咲く もう一つの桜のせいだろう。 たとえば舞台の書き割りに、[略]描かれた桜。外国人には 美学的にしか映らなくても、日本人には情念の誘発装置と して作動する強力な象徴なのである。[略] ところで情念はしばしば感覚と混同されがちである。 しかしこの二つはまったく次元の違うものなのだ。[略] 情念はむしろ言語に近い。言語そのものではないが、その 周辺に隈(くま)のようにかかる亜言語、もしくは準言語 なのだ。>(p49) 『III 破滅と再生 2 聞き手・小林恭二』より__ <みんなで同じテレビを見ているという安心感でボーッと している>のは麻薬的だということを受けて、 <安部 [略]靖国神社の閣僚公式参拝なんて、麻薬の効果を 見はからっての計算じゃないかな。大胆すぎるものね。反対派は、 [略]理由のいかんを問わず、国家儀式の整備強化そのものを拒否 すべきだと思う。 __マスコミもいずれは儀式化を売りはじめるでしょうね。 安部 とうに始めているよ。スターの結婚式の生中継、離婚の 記者会見、さまざまな作法の指導、ヤクザの出入り......とくに ひどいのはスポーツ中継かな。ほら、国体なんかのとき、まず 選手入場、それからなんとも薄気味悪い選手代表の宣誓...... あれ、寒気がするね......まるでナチスみたいに右手を斜め上に 挙げて、喉(のど)が張り裂けんばかりに絶叫するだろ。何を言って いるんだか分らない。まさに狂気の表現だ。脱糞(だっぷん)の最中 を見せられているようで、寒気がしてくるよ。でも儀式だから成り 立つんだね。儀式を許容するというのは、結局そういうことなんだ。> (p174-175) 安部公房が考える破滅の具体像はどんなものか、と小林恭二が問う。 核兵器による破滅みたような物理的なものではなく、 <__[略]ファシズムの台頭だとか......もっともファシズムの概念、 あまり実感がないから使いたくないんですけど、社会的に因果律を 否定する方向を辿っていけば...... 安部 たぶん愛国心ってやつだろうな。過剰儀式の中に溺(おぼ)れて 息が止りかけている状態だ。核戦争は肉体の御破算だけど、その前に もっと誘惑的な精神の御破算願望があるだろう。いま自分を弱者に おとしめている条件を叩(たた)きつぶすために、徒党を組んで、その 徒党に忠誠をつくす快感。強烈な排外主義と裏腹になっているけれど、 これも一種の疑似平等観だよね。ナチスだって国家という帽子こそ かぶっていたけど、いちおう社会主義を名乗っていたんだ。なんとも 御愛嬌(ごあいきょう)じゃないか。やはり民衆の夢としての平等観を 餌(えさ)にせざるをえなかったんだな。>(p162) 単行本『死に急ぐ鯨たち』は1986年に刊行された。今から31年前 である。安部公房が原稿用紙ではなくワープロを使っているのが、 奇異に感じられていたころ、パソコン普及前夜である。 わたしは植民地に生まれなかったが、安部公房の感じ方に共感する。 (安部公房『死に急ぐ鯨たち』 新潮文庫 1991初 J) 呪 亜屁沈臓/呪 共謀罪=ネオ治安維持法/呪 吐爛腐/ 共謀罪強行成立記念! 安倍政権の暴挙を忘れないために振り返る 「共謀罪トンデモ答弁・暴言録」 【票を入れるな危険】日本会議所属の都議候補一覧 小池百合子氏 日本会議“本流”から外れた愛国者 「共謀罪」法 衆参両院議員の投票行動 上記のPDF
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by byogakudo
| 2017-08-11 21:39
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