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猫額洞の日々

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2017年 12月 25日

大庭萱朗 編『色川武大・阿佐田哲也エッセイズ3 交遊』読了

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 『I 遊ぶ』『II 漂う』『III 読む』『IV 食べる』の四種類
に分けられているが、『II 漂う』のトップに出てくる『地中海の
タキシード』(色川武大・名で書かれた『ぼうふら漂流記』所収)
がすばらしい!と、Sとふたりして思う。

 (余計なことだけれど、色川武大・名が*印、阿佐田哲也・名が
※印と分類されているが、老眼には判別しにくい。若いときには
一目で区別できただろうに。)

 『エッセイズ』とジャンル分けされているが、"エッセイ"が、
身の回りのできごとの観察やそこに発する思いを述べる文章だと
したら、『地中海のタキシード』は"エッセイ"のスタイルで書かれた
小説、と呼ぶべきではないか。

 作家である"私"が主人公だから"私小説"かというと、断じて、そうは
ならない。主人公は作家個人であると同時に、近代の日本の肖像ではと、
感じられてくる。パースペクティヴの広さや深さが、身の回りのことに
収まらなくなる。

 必要もないのにタキシードを誂える。それを着る必要がある場としては、
必然的に西洋のカジノだろう、ということで、妻と別れようとしても別れ
きらない主人公(の作家)は、写真家の女友だちと南仏に逃避する。

 賭博場なら彼のフィールドのはずだが、ヨーロッパのカジノはそうならない。
みんな平服の中に、ひとり、礼服着用であっても、東洋人である作家は度々、
席に着くことを拒否される。日本は西洋の仲間ではなかったし、今でも仲間
ではないことの一例のように。
 拒否される場面の直前に、同行の女友だち(ロンドンで暮らしていた)が、
カジノの客の出生民族を説明してくれるカットが入った上での、拒絶シーン
である。

< ああ、ヨーロッパに来てるんだな、と実感した。そうして自分が、ばくち場
 でもやはり言葉のできない犬ころにすぎないことをさとった。>(p215)

 出発前に大金をはたいて、やけくそのように買った靴が合わなくて__妻の
呪いかと、主人公は考える__、びっこを曳きながらカジノ巡りを続けていると
ナルコレプシーの発作に襲われ、顛倒して、まだ代金を払っていないタキシード
が裂けてしまう。

 『地中海のタキシード』の最後は、大晦日の夜だ。他に行くところがないので、
やはりカジノに行く。

< どこからこんなに集まったかと思うほどの紳士淑女たちが、いっせいに
 タキシードや夜会服に飾って集まっており、ラフな格好でびっこを曳きながら
 入ってきた私の方に、奇異な視線を浴びせてきた。>(p223)と、終わる。

 どんな時空にも居場所が見いだせない、あるアプレゲールの生涯を切りとった
ような瞬間だ。
 

     (大庭萱朗 編『色川武大・阿佐田哲也エッセイズ3 交遊』
     ちくま文庫 2003初 帯 J)





呪 亜屁沈臓/呪 汚池腐裏子/呪 共謀罪=ネオ治安維持法/呪 吐爛腐・夷蛮禍/

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by byogakudo | 2017-12-25 20:58 | 読書ノート | Comments(0)


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