猫額洞の日々

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2006年 02月 28日

フエンテス「アウラ」再読

 安藤哲行訳(エディシオン・アルシーヴ 82初函帯)である。岩波文庫版は
二人称が「あなた」、こちらは「おまえ」を使用。

 二人称の訳し方の違いががいちばん目立っているが、トーンの違いは歴然と
している。アルシーヴ版の演劇的な身振り、岩波文庫版の淡々と穏やかな翻訳振り。
 もしかしたら文庫版の方が原文に忠実かも知れないというヤマカンも働くけれど、
日本語で読む小説として見た場合、わたしは単行本の翻訳に惹かれる。張詰めた
空気のままエンディングに引きずり込まれる。

 再読しても、やはりこの緊張感が素晴らしい。Sに言わせれば「レースや
オーガンジーみたいな」感触の読後感である。
 主人公・アウラの緑色の眼はジャン・ロラン「フォカス氏」を思い出させ、
世紀末文学の伝統か とも思うが、赤い目をしてヒロインのベッドの周りを飛び跳ねる
白い兎は、何のメタファーだろう?
 耐えがたいほど美しい ネクロフィリア物語だった、やっぱり。

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by byogakudo | 2006-02-28 18:29 | 読書ノート | Comments(3)
Commented by ジャック・リゴー at 2006-02-28 21:08 x
あなたの言うとおりだ。おお、わが愛読書、アウラよ。私には触れることができない、あなたにも、何にも、この無以外には。
Commented by byogakudo at 2006-03-02 18:44
 (緑の補色である)赤い目の白い兎は、あの小説の中で唯一の
生き物であるような気もします。
 褪せたイーストマン・カラーが更に色彩を喪いモノクロームに
近づき、登場人物のフェイズも生者から死者に移行して行く中、
まるで無関係に画面を飛び跳ねる赤い目の白い兎。
 
Commented by ジャック・リゴー at 2006-03-02 23:54 x
赤い眼の兎。私にとっても、フェンテスのこの作品がとくに不可解な魅力に包まれているのは、どこか突飛なこの小動物がほぼシチュエーションと無関係にそこここに登場するからかもしれません。あなたのおっしゃるとおりだと思います。それにしてもあの生き生きとした物言わぬ動物は何なのでしょうか。隠花植物の鉢植えのあるあの暗い屋敷のなかで…。


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