2006年 03月 23日

(1)「覆面の佳人」途中

 1929年において、明治半ばの探偵小説は 既にノスタルジーの対象であったの
だろう。黒岩涙香式 欧米探偵小説の翻案を、横溝正史が試みたのが、これである。

 乱歩の名前はあっても、名前だけ。実際は正史 単独作だそうで、新聞連載小説の
ネーム・ヴァリュー上、乱歩名が加わったらしい。
 アンナ・キャサリン・グリーンの原作を翻案とあるが、書いて行くうちに
原作から離れ、独自の展開をしたと、ある。

 涙香調は人物と街の名前に現れる。パリが舞台で、登場人物はみんな日本人名に
変えられ、しかもネーミングで善玉・悪玉がすぐ解るようになっている。

 犯人に間違われる主人公が 成瀬珊瑚子爵(パリ社交界の伊達男。官憲に追われて
イギリスの老伯爵・名越梨庵と名乗り、身を隠す。naruse sango と nagosi rian は
アナグラムかと思ったが、音を似通わせただけだった)。
 敵役は蛭田紫影検事(血も涙もない絵に描いたような悪役ではあっても、紫影という
ところに やや同情の余地ありか?)。

 パリの悪所 春巣街(はるすがい)で殺人事件が起きる。身元不明の死美人!(近頃
主婦が殺されるとTVワイドショウでは「美人妻殺さる」と表現されるが、その走り
かしら? この小説の場合は文字通りだが)が漏具街(もるぐがい)の死体陳列所で
公開された・・・。

 地の文は黒岩涙香と異なる。あんなに泥臭いまでの大時代ではなく、カジュアル。
だから却って、人物名や街の名前としっくり来ない感もあるが。

 パリ郊外の砂村(すなむら)にある 古い館の記述が愉快だった。
 <そうした深い木立の中をしばらく進むと、ようやく古びた洋館の一角が見え
 はじめた。> フランスの洋館って、なあに?

3月24日に続く~

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by byogakudo | 2006-03-23 18:46 | 読書ノート | Comments(0)


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