社会保障制度のない頃の貧乏は凄まじい(今はあるけれど、ちゃんと機能して
いるだろうか、餓死者が出ているじゃないか?)、幼くして一家離散、学校に行けず
文字はルビ付きの新聞で基礎を覚え、時々お金があると私塾で漢文の本の読み方を
習い、独力で新聞記者から劇作家となる・・・。
博徒になってもおかしくなかった環境だが、その道を選ばない。
自伝だけれど、自分との離れ方がすばらしい。「新コ」は完全に著者から独立した
存在だ。彼の劇作家性 所以だろうか。
生母が家を出てしまった寂しさに関しての記述:
<・・・後になって新コは取り的を主人公にした『取り的五兵衛』という芝居の
本の中で、父を知らない女の子に、「あたいすこしおとッさん憶えてる、だって、
あたいが小さいとき、お菓子をくれて行った人、あれが屹度お父さんだよ」と、
いわせています。それから以後はこの事に限っての新コの感傷が消えました、
新コに代ってそれをいう者が別にできたという事は、心
ゆかせになる。
(注:ボールドは圏点の代わり)>