2006年 06月 26日

「あなたをつくります」読了

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 感想文を書き難い本だ。なんていえば良いだろう? 形而上学的私SF?
 小さな電子オルガン製造販売会社がリンカーンとその部下・スタントン北軍陸軍
長官のシミュラクラを創ったことから起きる、大会社との抗争がメイン・プロットに
見えて、実は、主人公のつれなき美女に対する偏執的盲愛が主調である、とても
ディックらしいビートニクSFである。ということにしておきたい。

 動物とは、人間とは、機械とは何か。創り主の立場からいえばどれも等しい
存在ではないかと、シミュラクラが考察したり、p240のほとんどPh.K.Dick自身の
告白:
< 私にとってプリスは、生命であり__同時に、反生命でもある。・・(中略)・・
彼女をそばに置いておくことは、わたしには耐えられない。彼女がそばにいない
ことも、わたしにはがまんできない。彼女がそばにいないわたしはどんどん衰えて、
ついにはなにものでもなくなって、裏庭のゴキブリみたいに死んでしまった。だれにも
知られず、なんの価値もなく。彼女のそばにいるわたしといえば、切られ、突かれ、
バラバラにされ、踏みつけられ__それでもどうにかして生きている。そこでの
わたしには、現実感がある。傷つくことを楽しんでいるのか? ちがう。それは
いってみれば、傷つくことが生きることの一部なのだ。プリスとともにいることの
一部なのだ。・・・>

 p305に<伝説の歌手アール・グラントを聴きに>行くシーンがあるが、あの
"The end of the river~" と歌っていたアール・グラントだろうか。
                   (Ph・K・ディック 創元SF文庫 02初)
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by byogakudo | 2006-06-26 12:54 | 読書ノート | Comments(0)


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