2006年 07月 11日

「ヴァン・ゴッホ 社会による自殺者」読了

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 「神の裁きと訣別するため」(A・アルトー 宇野邦一・鈴木創士訳 河出文庫
06初帯)中の「ヴァン・ゴッホ 社会による自殺者」(鈴木創士訳)を昨夜読む。

 恰好いい日本語だ。これでなきゃ。
 ごつごつと、息づかいもあらくアルトーの声が聞こえてくるような感触を
与える、素敵な日本語訳である。

 店にきて35年前の粟津則雄訳「ヴァン・ゴッホ」(新潮社 71初函)と少し
読み比べてみた。問題にならない。粟津訳は、意味内容を噛み砕いて日本語に
置き換えようとする意識が感じられる。アルトーを翻訳するのに、まず意味の
伝達が要請される時代情況であったからかも知れないが、噛み砕いた挙句、
それはアルトーから遠く離れ、もたついた・口の中でごにょごにょ何か言ってる
みたいな日本語で、却って伝わらない。

 そんなことを考えているところへ、久しぶりのお客さま。彼も河出文庫版で
読んだばかりと仰る。もうすぐ25歳になる青年であるが、粟津訳も読んだことが
あるけれど、この新訳の方が「ピンとくる・日本語として伝わってくる」と、
同意見であった。

 噛み砕くと、ものは変質する。鈴木氏の翻訳は、ほぼダイレクトにアルトーを
感じさせてくれる。素晴らしい。

 文庫本で650円という値段もいい。若い人々が買いやすい、正しい価格設定だ。
河出文庫で、ドリュ・ラ・ロシェル「ゆらめく焔」も出してくれないものだろうか。
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by byogakudo | 2006-07-11 13:09 | 読書ノート | Comments(0)


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