「言語文化のフロンティア」を読了せずに投げ出す勢いもなく、違う本が
読みたくなって、「小説のタネ](子母沢寛 中公文庫 84初)を手にした。
時代小説家の本業?である時代物を読んだことがない代りに、彼等の書く
随筆集は、時々読んでみる。たいてい感じがいいから。
まだ途中だが、集中の「甲州の黒駒」が素敵。雨もよいの春の一日、甲州の
旧家の土蔵に古文書を探した__しかも結局すでに失われていたことが解る__
というだけの話なのに、うっとりさせる。ときどき聞こえてくる鶺鴒の鳴き声が、
いつの間にか時間が経っていることを 読者にも気付かせる、とても効果的な
使い方である。
新選組と赤穂浪士の違いも近年まで、よく区別がつかなかったし(どちらも
制服の暗殺集団ではありませんか?)、チャンバラも人情も幕臣方の悲哀にも
感情移入できない質なので、この先、時代小説ファンになる可能性は少なそうだが、
静かなエッセイは愉しい。
今朝の新聞に「白夫人の幻」(R・V・ヒューリック HPB)の広告を発見! やっと
次のディー判事が読める。明後日、買出し後に東京堂だ。ちゃんと千円強 残して
おかなくては。