2006年 08月 06日

「子不語随筆」を読み始める

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 「幻影城通信」に続く講談社 江戸川乱歩推理文庫63「子不語随筆」だ。
昭和27年頃、ようやくサンフランシスコ講和条約が結ばれ、外国との交流も
可能になった頃合い、乱歩は戦時中のブランクを取り戻そうと、しきりに外国の
ミステリ界との接触を求める。

 半年ほど文通し合ったフランスの推理小説家・書誌学研究者、マスロフスキーに
頼まれてアジアのミステリ状況を調べようとしていた折、旧知の仲のグーリック__
今の表記では正しくヒューリックであるが__から、インドのオランダ大使館勤務に
なった旨の手紙が届く。そこでインドのミステリ界の様子を尋ねてみると、
p68<グ氏の手紙はいつも巻紙に毛筆の日本文で書いてある。>
 インドの探偵小説については、
p69<「(印度は)独立になってから、みんなは自国の文化に没頭して、印度の
   文学界と美術界が大変賑(にぎ)やかになった。ただ探偵小説は余り盛んでは
   ありません。この方面の出版物は大概英米原著の訳文だけである。その原因は
   昔の印度の王様の役人の国民の虐待、英国占領時代の警官の独立運動の抑制、
   斯様(かよう)な背景があるから、一般の人々は探偵小説には余り興味が
   ありません。・・(以下略)・・・」>

 ここまで日本語の手紙が書けて、日本の探偵作家クラブで話をしたこともある
ヒューリックであるが、なぜ「わたしの名前は『グーリック』ではなく
『ヒューリック』です」と、日本の友人たちに述べなかったのだろう? 一言伝えれば
それで済むことなのに、間違いを訂正して相手に恥をかかせては悪いと、遠慮でも
したのだろうか?
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by byogakudo | 2006-08-06 13:42 | 読書ノート | Comments(0)


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