猫額洞の日々

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2006年 11月 01日

「月が昇るとき」読了。素晴らしい!

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 (写真はクリックすると拡大します。)

~10月31日より続く

 第1章の直感は当っていて、ほんとに見事な作品だった。翻訳もいいのだと
思う。川と運河のあるロンドン西郊の街と(地方都市と書いたのは間違い、訂正
します。)そこに暮らす少年たちの冒険が、うねりと流れを持って描写される。

 日本語の過去形語尾は「た」しかないので、原文に過去形が続くときは
時々現在形を混ぜて訳した方が単調にならないという、翻訳技術の基礎編が
あるけれど、論創社版の翻訳みたいに、このテクニックを金科玉条とするのも
善し悪しである。息切れしてるような感じを受けることがある。

 「月が昇るとき」が素敵なのは、きっと原作の空気も日本語訳と同じに
違いないと感じさせる流麗さにある。語尾の「た」がどれほど続こうと
気にしない(ように思わせる)ノンシャランなトーンで、静かで確実で
決してはしゃがない物語が綴られて行く。
 ハリウッド映画的ルーティーンでは、次に必ず主人公に危機が訪れる筈の
シチュエイションが描かれても、グラディス・ミッチェルの世界では
何も起らず、物語は淡々と進行する。この落ち着き方が素晴らしいところで
かつ大ヒット作にならないところだろう。

 賢く、こどもらしく生意気な少年たち、こどもを自立した存在として扱う
周囲の大人たち、変人たち。登場人物も魅力的だ、サーカスや夜の街の
描写と同じく、うつくしく懐かしい。
             (グラディス・ミッチェル 晶文社 04初帯)

11月02日に続く~
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by byogakudo | 2006-11-01 15:43 | 読書ノート | Comments(0)


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