2006年 11月 09日
(写真はクリックすると拡大します。) 龍口直太郎訳「秘密諜報部員」と河野一郎訳「アシェンデン」と をアシェンデンのボスが女スパイを尋問する箇所で比較してみたい。 1) 「秘密諜報部員」(創元推理文庫 84年40刷) p150より < 「・・・わしはきびしい叔父さんのように、ズケズケと さとしてやった。天罰の恐ろしさもふきこんでやった。十年の刑には 処せられるぞといってやったら、女もおびえていた。それがわしの 目的だったんだがね。むろん女はすべてを否定したが、証拠は揃って いるんだ。のがれるチャンスはないぞとつめよって、三時間も ねばったね。女はケチョンケチョンになって、とうとうすべてを 白状しちまった。・・・」> 2) 「アシェンデン」(新潮文庫 63初帯) p148-149より < 「・・・わしはオランダ人の伯父さんのように、きびしく さとしてやった。神を恐れにゃいかんと説いてやった。懲役十年は 固いところだとも言ってやった。女もこれにはぎくりとしたようだった、 もっともこっちじゃそれを狙ってたんだがね。もちろん、女は知らぬ 存ぜぬの一点張りだ。しかし証拠はちゃんとあがってるんだ、いいかげんに 観念したらどうだ、と言ってやった。三時間ねばったよ。 とうとうしどろもどろになって、すっかり泥を吐きやがった。・・・」> アシェンデンのボスは上品な育ちではないが、1)のカタカナ表記多用ぶり (「ズケズケ」や「ケチョンケチョン」)は当時よく見かけた手法だけれど 雑で、どうも好ましくない。スパイ小説だからと、誤解に基づいたハード ボイルド・タッチで訳したのかしら? また、「叔父さん」・「オランダ人の伯父さん」の箇所は、前者は日本語的に 砕いて訳そうということだろうが、賛成できない。原文の直訳に近い(だろうと ヤマカンで思う)後者にむしろ、日本語の可能性を感じる。 [2018年9月13日:追記 昨日、創元推理文庫版『秘密諜報部員』を手にいれた。読んでいるはず だと検索、このページを見つけた。『秘密諜報部員』でなく『秘密諜報員』 と、長年、間違えていた...。 "部"を抜かしていた他の投稿も、見つけられる範囲で訂正したあげく、 この2006年投稿の「オランダ人の伯父さん」を dutch uncle で引いて みたら、出ている。 "Dutch uncle 厳しくも率直なアドバイスをする人"ですって。]
by byogakudo
| 2006-11-09 15:04
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