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「メグレ夫人と公園の女」(ジョルジュ・シムノン 河出書房新社
83年新装初)を読み始める。中庭のあるアパ−トメントを思い浮かべながら
ゆっくり読む。
石造りの壁面に厚く重い板の扉。偶然開いていたので入って行ったことが
ある。暗いアーチ状の入り口に、小さな中庭からの光、左奥は剥製師の工房
らしく、ショーウィンドーになっていた。
この小説では、工房で死体が焼かれたらしいと匿名の情報があり、
ベルギー出身の製本師が犯人と疑われる。彼の工房は道路に面しているから、
飾り窓も表側だ。門をはさんで雨傘店のショーウィンドー、という造り。
49年か50年の出版、ということでロベール・ドアノーの撮った人々や
風景を思う。大きな牛乳瓶をかかえた買い物途中のヌードダンサーの写真なぞ、
剥製師の奥さん(元街娼)の若い頃みたいに見えてくる。
メグレ夫人にしても剥製師の奥さんにしても、夫に何を食べさせるかを
まず一番に考えて暮らしている。
いいなあ。なんだか羨ましい。家事をやらない人間が何を勝手に憧れてると、
言われそうだけれど。
12月25日に続く~