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猫額洞の日々

byogakudo.exblog.jp
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2007年 01月 18日

「原っぱ」読了

 初めて池波正太郎の小説を読む。でも時代ものじゃなくて、バブル経済期の
東京に生きる昔風の律儀で地味な生活者が登場する__ああ、こんなとき
『市井の人々』って使えばよいのか!__現代小説だ。

 読み出してすぐ、むかしの(戦前の)フランス映画みたいと思ったら、
あとがきで川本三郎(昨日に続き、あとがきは彼・川本三郎)が
<成瀬巳喜男や五所平之助の白黒スタンダード映画のような端正な小品である。>
と書いていた。

 落着いた佳い小説。冬の季節に始まり、一年後の冬に終わる構成もきれいだし、
もう書くことはあるまいと思いなしていた老(60歳だから、それほど老人とは
いえないが)劇作家が再び筆を執るシーンでエンディングを迎える、ほのあかりの
ような美しさ。

 読み手がわたしじゃなかったら、もっと感激するのだろうな。しみじみ派では
ないので、ふーんという感想。良さはわかります。
 池波正太郎は初期に<『緑のオリンピア』という三段跳びの選手を主人公に
したスポーツ小説>があるそうで、ちょっと読んでみたい。
                 (池波正太郎 新潮文庫 99初)

 今夜は「抜き射ち刑事」(城戸禮 双葉文庫 90初)になるのかしら。J(カヴァ)の
絵が、ゲイ雑誌の表紙画にもよさそうで、すこし困る。

by byogakudo | 2007-01-18 16:53 | 読書ノート | Comments(0)


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