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猫額洞の日々

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2007年 01月 21日

「女興行師 吉本せい 浪速演藝史譚」読了

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 (写真はクリックすると拡大します。)

 ああ、「抜き射ち刑事」は昨夜も忘れられている。「女興行師 吉本せい 
浪速演藝史譚」を読了。

 初めの方に出てくる明治の寄席で色物と総称された演藝中、「女道楽」という
のが解らなかったが、p156にやっと説明されていた。
<女道楽という、女の藝人が何人か並んで三味線ひいたり、唄ったり、
 滑稽なやりとりをする藝があったのだが>。

 つまり寄席の客が、お座敷に藝者を呼んでいろいろ藝をさせる、お旦那衆
みたいな立場に立てるから、「女道楽」と称されたのだろう。
 どう面白いのか、面白がれるのか、不明。歌舞音曲にうといので。

 吉本興業を軸に展開する、大衆社会発展史だった。
 寄席という娯楽産業の客層が、明治以来の着物姿の庶民から、洋服を着る
会社員・学生たちの新大衆に変わりつつあるとき、吉本興業はそれを見抜いて、
古典落語ではなく新作落語、落語よりも新大衆の日常に根ざしたおかしみを
見出す漫才にシフトして、それが当った、ということである。

 矢野誠一は、毀誉褒貶ある吉本せいと吉本興業に対して、冷静にしかも
歯に衣着せぬ態度で筆を進める。クールで愉しめた。
                (矢野誠一 中公文庫 92初)

by byogakudo | 2007-01-21 16:24 | 読書ノート | Comments(0)


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