2007年 01月 23日

「一握の塵」半分ほど

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 (写真はクリックすると拡大します。)

 「ブライヅヘッドふたたび」と同じく、室内の様子が描写されているのが、
まず嬉しい。ものに籠められた人の愛や追憶の思いが、いとおしい。

 主人公トニィ・ラーストは、先祖代々の館に、こども時代の記念物をずっと
蓄えて住んでいる。
<ドレッドノート型軍艦の額入りカラー絵(『チャムズ』誌の色刷り付録。
巨砲のすべてが火を吹いている)、(中略)、種々の気まぐれな趣味の産物である
卵や蝶や化石やコインを収めた「博物館」とよばれる飾り戸棚(キャビネット)、
(中略)、曾祖父が取り壊す以前のヘットンの建物を描いたアクアチント、(中略)、
『家庭木工術』、『誰にもできる手品』、(中略)、『地主と小作人のための
法律』、『武器よさらば』など。>(p22)

 もうカントリーハウスを維持し続けることは困難な時代状況なのに、彼は
先祖代々の大地主としての生活様式を愛し、地元民のためにも誠実に、それを
生き続けようとするものだから、まあ、奥さんに浮気されたりしてしまう。
 「いい人なんだけど、ちょっとぼんやりで退屈」なのでしょう。イーヴリン・
ウォーの主人公らしい、状況の被害者タイプだ。

 跡継ぎの息子が事故で死に、離婚騒ぎになるところで、昨夜は眠る。
内容とは関係ないが、ときどき誤植が目についた。
               (イーヴリン・ウォー 彩流社 96初)
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by byogakudo | 2007-01-23 12:43 | 読書ノート | Comments(4)
Commented by 美咲歌 芽句 at 2007-01-23 23:18 x
蔦の絡まる風景というものは、猫の居る風景とともに、なぜかくも
美しくこころ癒されるのでしょう。私も蔦という植物が大好きです。昔から蔦の絡まる家やアパートに住みたいと憧れ続けているのですが、未だ叶いません。蔦よ、増殖しろ。
どこまでもどこまでも、その蔓を無限に伸ばし、その原始的で強靱な生命力と増殖力でもって、東京の街を、いやすべての大都市を、
いや、この瀕死の地球を丸ごと覆い尽くしてくれ!
死に急ぐ世界の片隅で私はそう願う。
Commented by byogakudo at 2007-01-24 16:59
Hi ! コメントをありがとう。後半の、思いが噴出して
クレッシェンドしていく部分が芽句らしい。
ヤな時代で、時々耐えられなくなりますよね。まだ生存して
いなければならないのかって。
Commented by ES at 2007-01-25 18:30 x
! 耐えられない! どうやって①抜ければいいのか?!
Commented by byogakudo at 2007-01-26 19:01
新宿の地下道を歩きながら、基本的にあまり生存していたくない
自分自身を、あらためて見出す。死が訪れてくれるまで生き続け
なければならないのは、無慈悲だ。


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