猫額洞の日々

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2007年 02月 26日

(2)『下宿屋文学』あるいは妄想と孤独

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Smoke Gets In Your Eyes

~2月25日より続く

 日本で、ひとかたまりの建物の内部を分割した空間に住む人々が出現したのは
いつ頃? 始まりは銀座アパートや野々宮アパートメント等、今の「億ション」
(何度聞いても下品な響きだ)に相当する住居形式が、やがて安普請の一軒家を
分割して住まうアパートになる。

 「誰にもできる殺人」(山田風太郎 廣済堂文庫 96初)の「人間荘」アパートは
もちろん、アパートという言葉も内実も下落して後のアパートである。
 2階建てで、1階に共用の炊事場と手洗い、2階への急な階段の手すりは
ぐらついている。昭和20年代末から30年代初頭('55年前後)にはよく見かける
アパートだ。

 戦前からすでに都市生活者の中では、アパートは長屋と同じく低廉な家賃で
暮せる住居形式として定着している。
 『日本下宿屋文学選集』として言いたいのは、そこがどんなに隣の物音が
筒抜けの住まいであっても、個人のための個室空間はアパートによって成立した
ということだ。イエから離れ、知り人の少ない都市に独り又はカップルで孤立して
暮らす生活様式が確立された。

 ムラ的共同体では許される筈のない、孤独な妄想空間の出現である。「甘い蜜の
部屋」・「夢みる部屋」であり、住人が殺人妄想に耽り実行する「人間荘」にも
なりうる・・・。

2月27日に続く~
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by byogakudo | 2007-02-26 16:24 | 読書ノート | Comments(0)


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