2007年 04月 26日
(写真はクリックすると拡大します。) よくできた推理小説。探偵小説というより、推理小説と呼びたくなる。 堂々たる本格推理だが、メタ・ミステリ風味が感じられる。 とても出来がいいんだけど、何なのだろう、愛せないのは? 文句の つけようが見当たらないのに。主人公のロシア貴族の人格が高潔すぎて スーパーマンみたいだからか? いろいろ理由を考えて、岩波コンプレックスかしらと、そこに思い当たる。 出版社にもカラーがある。岩波書店だと、やっぱり硬派出版社のイメージが 強い。ブランドイメージが確立されているから、どうも違和感があるの だろう。しっかりした本を出すところ。加藤周一「日本文化における時間 と空間」なんて、読みたいなあと思わせる。 でも、たとえば岩波文庫版「白衣の女」(ウィルキー・コリンズ)が何だか 愉しく読めなくて、フリオ・コルタサルの幻想小説の岩波文庫版には違和感 がなかったというわたしの記憶がある。これは何? コリンズの俗っぽさと岩波文庫カラーとが齟齬を来すってことか? コル タサルは「文学」だから、岩波文庫に入ってもしっくり来るというスノビスム に、わたしもまた侵されているってことだろうか。あれこれ反省します。 ブランドカラーの確立は大切、だが一旦できあがったカラーの範囲を超え ようとすると、今度は自らのイメージに掣肘される。むずかしいな。 (ボリス・アクーニン 岩波書店 07初帯)
by byogakudo
| 2007-04-26 12:50
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