2007年 05月 28日
(写真はクリックすると拡大します。) (その前に__spin第2号はいつ出るのかしら? 先週末の神戸・海文堂 書店でのトーク・ライヴの様子が収録されるんだ! 嬉しいな、行けなかった から。鈴木創士氏の短篇小説も掲載されるのかな?) 長崎出版なのでマイケル・イネス名の「アリントン邸の怪事件」。 原作は68年刊だそうだが、おっとりしていること。舞台はスウィンギング・ ロンドンを遠く離れて、アプルビイ元警視総監(そこまで出世したとは 知らなかった)の引退先。やはり引退した元科学者や没落した郷紳たちが 登場する、黄金時代さながらの探偵小説風景である。 それでも時代が時代だから、アリントン邸ではソンネ・リュミエールに お城を貸したりしている。「ソン・エ・リュミエール」と書かれているが 英語で発音するときはリエゾンしないのだろうか? それとも原語の各単語を 示すために、敢て一語ずつの表記にしてあるのか。 前書きの「読者へのささやかな道案内」筆者名がレッド・ヘリングで あるのも、古風さを狙ってのことだろうが、あんまりお洒落な趣向とは 受取れない。 と、悪口ばーさんですみません。地味で落着いた好もしい書き方の 探偵小説なのに、まず文句から始めるのは性格がよくない。 でも文句ついでに、誤植を指摘させて。前書きの(p10)「レストナード警部」 と本文頁のp141「何やらだだならぬ」です。まあ、活版印刷時に比べれば 近ごろの本はほとんど誤植がなくなっているのだけれど。 イネスにしてはどたばたが控えめ、没落紳士がチャーミングだった。 (マイケル・イネス 長崎出版 07初帯) 話がイネスから逸れるが、わたしが生涯に出会った最高度に誤訳・誤植の 目立つ本といえば、「ダリ 異質の愛」(アマンダ・リア 西村書店 93初帯) だろう。見開きで誤植や誤訳ゼロの頁がなかったと記憶している。原文を 読んでなくても間違いを指摘できた。 実際に翻訳に携わった学生たちも監修した教授も、残念ながらサブ カルチュアに関する知識がないと判断されるのだ。一例を挙げれば(p365) <・・・彼は私や、ウォーレン・ビーティや、彼の現在の恋人で『パパとママ』 を以前歌っていたミシェル・フィリプスとを、中華料理店に連れていった。> こういった塩梅である。ミスの多さにも係らず興味深い本ではあったし、何より アマンダ・レアと間違って表記されていた彼女を、リア表記に正したことは 認められるのだが。
by byogakudo
| 2007-05-28 14:56
| 読書ノート
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