2007年 10月 31日
買取の古いHPB4点中から「栄光の土曜日」(デイヴィッド・セラフィン HPB 82初帯)読了。他の3冊はガードナーはともかく、「二月三十一日」 はS・わたし、二人とも中途脱落。退屈な話がきらいじゃないわたしで すらメゲた。50年代にそういえばニューロティック・ブームみたいな ものがあったっけ。前衛志向は古びやすい。近年、文庫で復刊された ようだが、そんな価値があるだろうか。 もう1冊、「細い線」。成瀬巳喜男「女の中にいる他人」の原作だが、 これもSによれば話が動かないらしく、途絶。わたしはまだ手にしていない。 これらに比べて、読者サーヴィス満点なのが「栄光の土曜日」だ。 盛り沢山すぎて、食傷するくらい。作者は、スペインに21年余り住んでいる イギリス・オランダ系としかわからないそうだが、フランコ独裁体制が 終わったばかりの政情不安定なマドリッド風景を伝えようと、大車輪だ。 聞き込みに行く夜のにぎやかなマドリッドや、捜査に歩く旧市街の エキゾティシズム。観光案内さながらである。料理も詳しく記される。 警官たちの住まいも寂れた界隈から、フランコ政権の恩恵を受けた 階層の住む瀟洒な(であろう)郊外、被害者はおしゃれに屋根裏部屋 住まい(インテリアも凝っている)。 加害者・被害者・捜査者、それぞれに異なる政治信条。すべてが 混在する70年代マドリッド誌が描きたかったようであるが、詰め込み すぎてお腹いっぱいになるのが、あまり品がよくない。 もう少し押さえて書いてあればなあ。
by byogakudo
| 2007-10-31 13:14
| 読書ノート
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