2007年 11月 21日

団地小説として「白と黒」を読む

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 戦後の横溝正史である。どうなってるかと読み出したら、戦後
新風俗として、多摩丘陵あたりの新興団地が舞台だ。

 その前に、金田一耕助が団地の事件に取り組むきっかけがある。
< 金田一耕助はきょう渋谷(しぶや)のデパートで、古書展がある
 という案内状をうけとったので、べつに見たい本があるわけでは
 なかったが、ただなんとなく出掛けた。
  会場をひととおりまわったが、かれに食指を動かせる本もなく、
 一時間ほど見てまわったのちにそこを出た。>(p20)
 そして団地に出回るブラックメール事件の被害者・順子に声を
かけられる。彼女はいまは結婚しているが、むかし西銀座のバーに
勤めていて、金田一と知り合った。

< 順子の部屋は一八二一号室、これは十八号館の二一号室という
 意味で、団地全体に一八二一世帯もあるわけではない・・・。
  金庫の扉を思わせる鉄のドアに須藤という名札があって・・・。
  なかは六畳に四畳半、ほかにリビング・キチン。このリビング・
 キチンと六畳の客間とならんだ外の南側に、幅一メートルの
 細長いテラスがついている。>(p22) 

< 六畳の座敷を見まわしたところ、タンス、鏡台、ちゃぶ台のたぐい
 にいたるまで、いかにもこういう団地に住む若夫婦のものらしく、
 平凡ななかにも若々しい生温かさにあふれている。金田一耕助は
 尻(しり)こそばゆいような苦笑をおぼえて、テラスに出た。>(p23)

 この「テラス」は、いまなら「ヴェランダ」あるいは「バルコニー」
だが、当時はそう呼ばれたのだろうか。順子の部屋は一階だから
「テラス」でもいいと思うけれど、後で出て来る、三階の部屋でも
「テラス」表記である。

< そこから見えるのは第十八号館の南側である。第十八号館の三階の
 ・・・。・・・その部屋のテラスに三脚をもちだして、いまカンバス
 にむかっている男がいる。
  うえから見おろす位置になるので、顔はわからないが、ルパシカの
 ようなものを着て、ベレー帽をよこっちょにかぶり、チョビひげを
 はやしているかいないかわからないが、こんな場合にカンバスに
 むかっているというのは、キザといわれても仕方がないであろう。>
(p54)__大久保清の事件は、あれは1971(昭和46)年。この物語は
1960(昭和35)年10月11日が発端である。

 団地の描写に戻ると、後発の団地では(たぶん)作られなくなった
ダスト・シュートが「ダスター・シュート」表記で登場(p41)。

     (横溝正史 角川文庫 02改12版)
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by byogakudo | 2007-11-21 13:23 | 読書ノート | Comments(0)


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