2007年 11月 26日

「警官の血」上巻読了

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 お師匠さんからお借りしている(「あんたの好みじゃないけど
しっかり書けてるよ」)「警官の血」(佐々木譲 新潮社 07初帯)
上巻が済んだ。下巻に入っている。

 警察官三代の生き方と戦後世相の変遷が描かれる。祖父・父・
その息子三人とも駐在所勤務を好み、谷中五重塔近辺が舞台
である。

 初代が動物園前派出所にいた、昭和31年のエピソードから
引用する。(p171)
< この動物園前派出所の裏手にも、最近まではバラック集落
 があった。昭和二十年の下町大空襲のあと、被災者がここに
 バラックを建てて住み出したのだ。寛永寺、それに徳川家との
 関係の連想から、葵集落と呼ばれていた。ただし前の年の春に、
 ここに西洋美術館を建てることが決まったため、バラックは
 取り壊され、ほぼ二百世帯の住人は公園の中の旧プール跡地に
 移っていた。>
 ル・コルビュジエの前はバラック、その前は何だったのだろう?

 聞き捨てならない箇所もある。これも初代のエピソードから。
(p183)
< 万引きは罪には問えない。終戦後ずっと、生活の苦しさが
 理由の食料の万引きは日常茶飯事だった。ごくふつうの堅気の
 市民も、ときに商店の品に手を伸ばした。ましてや一銭のカネも
 持たない失業者や浮浪者が、やむをえず食品を万引きすることを
 抑えようもなかった。あまりにも当たり前のことであり、発生
 件数も多かったから、通常の万引きの場合は、窃盗罪による
 立件はしないのが警察と司法当局の方針だ。被害届けだけは
 受理する。捕まえた万引き犯について記録を作る。それだけの
 ことだ。もし万引き犯を捕まえたところで起訴はできないし、
 留置場に入れるだけ徒労というものだった。ましてや、万引き犯が
 子供の場合は。>

 万引きに歴史あり。ちゃんと窃盗罪として処理して来なかった
せいで、なんとなく軽犯罪意識が残ってしまい、本屋が__
本屋だけではありませんが__苦悩することになったのですね。

 資料負けせずに書かれていて、戦後史通読の感じ。好みで
なくとも面白く読んでいる。
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by byogakudo | 2007-11-26 13:13 | 読書ノート | Comments(0)


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