2007年 11月 29日

ピーター・ディキンスン・・・素晴しい!

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 「ガラス箱の蟻」(HPB 71初)を終え、「盃のなかのトカゲ」
(HPB 75初)に取りかかる。

 ピーター・ディキンスン、素晴しい。こんな作家を知らずに
生きて来てしまった。今からでも遅くない。手に入るだけでも
読もう。
 英語ができないのをこんなに後悔したこともない。日本語訳で
読んでさえ、言葉に対する深い信頼を抱いている作家ではないか
と感じられる。自らをかたちづくる言葉を信じ、抑制しつつ自在に
物語が語られてゆく。

 第二次大戦で日本軍によって滅ぼされかけたニューギニア・
少数民族の生き残りが、戦後ロンドンに移住する。
 率いるのは酋長とスコットランド女性。彼女は宣教師の父に
連れられて部族の村で育ち、イギリスで文化人類学者となる。
裕福な彼女は、彼らを広い家に住まわせ、民族的習慣をできる限り
損なわないよう、注意深く見守る。まるでノアの方舟のような
生活の中で酋長が殺され、ピブル警視が登場する。

 よいSFが読者に思考展開を促すように、「ガラス箱の蟻」に
あっても、私たちはピブル警視とともに少数民族の実験的生存状況を
体験する。異文化との絶え間ない接触(彼らはTVが好きだ)に
曝されつつ守り継がれる伝統儀式や習俗とは何か。観察者が現れる
ことで自意識が芽生え、伝統に則った行為に変更が加えられ、
彼らが少しずつ変わって行く中で起きた殺人事件を解決するより、
むしろ魅せられているかのようなピブル警視の姿。腐臭の残り香。
 ミステリ・ファン以外の人に読んでもらいたい本だ。
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by byogakudo | 2007-11-29 13:34 | 読書ノート | Comments(0)


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