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猫額洞の日々

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2007年 12月 02日

「盃のなかのトカゲ」読了

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 おとといの写真は合計3枚になりました。

 ピブル警視シリーズ第五作である「盃のなかのトカゲ」(ピーター・
ディキンスン HPB 75初)では、ピブル元警視になっている。醜聞が
あったわけでもなく、成績不良でもなく、ロンドン警視庁を馘首
されたらしい。他の作品を読めばクビになった理由も書かれている
のだろうか。

 彼の性格的なものが、警察人として不適格なのじゃないかしら?
妙な事件に関してセンスがあり、真相をつかむ能力もあるけれど、
事件に関係する人々に対して感受性がありすぎて、法律の厳格な
執行をためらう傾向が、この長編においても見られる。

 もう警官ではないから、かまわないものではあるが、しかし
最終的に市民としての倫理観が彼をうながし、子どもっぽい無邪気さ
と冷静なテロリストの二面性をもつアンナ・ラズロの存在を、異国の
警官に告げる。

 彼女がとても魅力的に書かれている。具体的な描写は少しにして、
彼女を見る男たちの視線を描くことによって、うつくしさを読者に
感じさせる書き方である。

 アーサー王と円卓の騎士とファム・ファタールの物語に、
ピブル元警視も参加させられ、彼は能う限り見る人であり続けた。

by byogakudo | 2007-12-02 13:27 | 読書ノート | Comments(0)


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